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東方の酒

季節は秋へと変わり村も少しずつ涼しくなり始める時期。

そんな中でもオルライトは仕事をきちんとこなしていく。

また任期終了間近という事もあり、本格的な要請が国から来た様子。

もちろん断る事も出来るがオルライトの決意は言うまでもないようで。

「ドワーフって本当にお酒が好きなのね」

「まあな、自分達で酒造りもする程度には好きだぜ」

「酒税が高い国なのに、それでも売れるのは本物だからよね」

ドワーフは酒を何よりも愛する種族でもある。

とはいえ酔わないという事は別になかったりするのだが。

「そういえば今も新しいお酒造りはしているのよね？」

「ああ、先日行商から異国の酒ってのを買ってな、それを造るのに挑戦してるんだ」

「異国のお酒なんてあるのね、それを造ろうとしてるの？」

「ああ、何事もやってみないと始まらないしな」

「私はお酒はあまり好きじゃないけど、お酒の美味しさが分かるのは羨ましいわ」

オルライトは宴席の場などでは酒は一応飲む方ではある。

とはいえ酒そのものはそこまで好きでもない。

なので自分から積極的に飲んだりはしないタイプだ。

「お酒の美味しさってどうにもよく分からないのよね、味覚が幼いのかしら」

「別に酒なんて無理に飲むもんでもぇないさ、好きな奴は飲めばいいもんだろ」

「でも貴族としての社交場ではお酒が出るのは当然ではあるのよねぇ」

「まあそういう付き合いがあると、酒は飲めないと話にならないよな」

「お酒の美味しさってなんなのかしら、私にはさっぱりよ」

オルライトには酒の美味しさは分からない。

とはいえドワーフも飲めない相手に無理矢理飲ませたりもしない。

なので酒の楽しみ方も分かっているようだ。

「そういえばドワーフって酒飲みではあるけど、酔い潰れるまで飲んだりしないわよね」

「そうだな、昔はエールなんかをよく飲んでたんだが、今はもっと美味い酒も知ってるしな」

「そういう意味ではお酒の味は分かってる感じなのね」

「まあ今は一気にごくごく飲むより、少しずつ味わって飲む方が美味いって気づいたんだよ」

「ドワーフのお酒の趣向も変わったのね」

ドワーフ曰く今は少しずつちびちびと飲む方が美味しいと感じるらしい。

昔はそれこそがぶ飲みするような飲み方を好んでいたという。

酒に関してはこだわりが強いドワーフでもそうした飲み方の変化はあるものなのか。

「でもその異国のお酒を再現出来たりするものなのかしら」

「材料さえ分かればどうにでもなるぜ、ドワーフは酒造りのプロっていう事もあるしな」

「そういう所は流石という感じがするわね」

「実際造ろうと思えば酒なんて造れるもんだ」

「お酒へのあくなき探求心も大したものね」

ドワーフは酒に対する情熱は鍛冶のそれとほぼ同格である。

ドワーフにとっての酒とは仕事をする上でも欠かせない。

だからこそ酒はドワーフの栄養ドリンクでもあるのだ。

「その異国のお酒って何から造られてるのかしら」

「聞いた話では米らしいな、東の国の酒なんだと」

「東の国のお米から造られるお酒、東の国って珍しいものも多いのね」

「ただ食用の米とは違うっぽくてな、そこはエルフに相談してみないとならん」

「もしそういうお米が手に入ったらお酒の再現も出来るものね」

ドワーフ曰く東の国にある米から造る酒なのだという。

なお食用の米とはまた違う米らしい。

それが手に入るかどうかという事になるので、エルフに相談してみる事になるらしい。

「でもドワーフにとってのお酒の大切さが分かった気がするわね」

「ドワーフと酒は切っても切れない関係だしな、酒の神を信仰してる種族だぜ？」

「お酒の神様、神様にも多様なのね」

「エルフなんかは自然信仰だろ？種族によって信じるもんはみんな違うのさ」

「それもそうね、ドワーフはお酒の神様を信じてるわけだし」

ドワーフは酒の神を信仰している種族である。

だからこそ酒に愛されているとも言える。

そんな酒好きだからこそ、酒への嗅覚もまた鋭いのだ。

「でも行商人って異国のものをよく持ってくるわよね、どうやって仕入れているのかしら」

「そういう繋がりでもあるんじゃないのか？商売なんてそんなものだろ」

「まあそれはそうなんだけどね、私にも分からなくはないし」

「この酒も再現出来たら、また美味い酒が飲めるしな」

「ドワーフがお酒を愛して愛されてるのが分かるわね」

ドワーフにとってのお酒が何を意味しているのか。

それは生きていく上で欠かせない、水と同じようなものでもあるそうだ。

だからこそ本当に美味しいお酒は再現してみたくなるという。

「でもドワーフのお酒は村の産業としても強いから、期待してるわね」

「おう、酒の事なら任せとけ」

「私はあまり飲まないけど、お酒にもそういう飲み力はあるものなのかしらね」

オルライトは酒はそこまで好まない。

だがワインなどは宴席の場では普通に飲んでいる。

その一方でドワーフの造る酒は村の産業としても強かったりする。

お酒の好みもまた人によるという事である。