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父親からの手紙

オルライトの任期が終わるまであと三ヶ月ぐらい。

そんな中父親からオルライト宛に手紙が届く。

その手紙を確認した上で改めて仕事の終わりが近い事を認識する。

また改めて手紙を出すとの事らしく、今回は現状確認だけらしい。


「お父様もきちんと私との約束は守ってくれたのね」


「お父さんから手紙が届いたんだっけ?」


「ええ、任期が終わる少し前に改めて意志の確認をするって事みたい」


オルライトの父親も約束をした以上はその約束を守らねばならないと思ったのだろう。


だからなのか婚約については正式に話をつけて解消したという事のようだ。


「でも本当に婚約話は解消してくれたのね」


「オルライトもなんで結婚を嫌がるのさ、別に何か困る事もないだろうに」


「私は結婚が嫌なんじゃなくて、仕事をさせてくれなさそうな結婚が嫌なのよ」


「今回の婚約相手はそういう人だったのかい?」


「村に来てから改めてその相手についても調べたの、どうにも束縛を好むタイプだったみたい」


オルライトの婚約相手として話が来た相手は束縛するタイプの性格だったという。

実際過去にもその束縛により相手の親を激怒させた過去もあるとか。


オルライトは元々今結婚するつもりはなかったが、それを知って改めて本気になったという。


「それにしてもなんでそんな相手が引く手あまたなのかしらねぇ」


「家だけは立派な家だからとかじゃないのかな」


「まあそれは確実にあるわよね、貴族の政略結婚って基本的に血を残すためのものだし」


「家督を継ぐのは基本的に長男、どうしてもな時は次男か長女が基本だしね」


「そうね、うちは家督を継ぐのは兄上になりそうだけど」


そういう理由もありオルライトは家督は継がないという事になる。

それもあり正式な要請が来たのなら領主になる事は何も問題はない。


とはいえ貴族の結婚はその血を残すという意味が大きいのはあるが。


「そういえば例の婚約話の相手、その家の唯一の男の子供らしいって聞いたのよね」


「そうなのかい?一人っ子というわけでもないんだろう?」


「長男の彼だけが男で、他には女の子供が七人っていう話らしいのよ」


「だからその長男をなんとしても結婚させようっていう事になってたのかな」


「恐らくはね、だから束縛するクセがありつつも結婚してもらわないとなんだと思う」


どうやらその婚約相手の話は、家の事情もあるようではある。

長男一人だけが男で他七人の子供は全員女。


それにより家督を継ぐ長男にはなんとしても結婚してもらわねばという事らしい。


「でも男、基本的に長男が家督を継ぐ世界で女ばかり生まれるって何かの皮肉なのかしらね」


「なんというか神がそういう運命を与えたとしか思えないような話だよね」


「男、基本的に長男が家督を継ぐ世界で女ばかり生まれるのは面白い話というか」


「実際王族の子供が女ばかり生まれた国なんていうのは歴史上にはあったりするからね」


「そう考えるとなんで女の子ばかり生まれるんだ、王家が断絶するってなりそうよね」


歴史において女ばかりが生まれた事で、後継ぎに困った国は存在する。

ベル曰く、仕方なく女に王位を継がせた結果悪政を連発し国が傾きかけたりもしたとか。


世の中には歴々の女が国を治めてきた国も存在するが、それはそういう歴史でしかない。


「でも王族でも貴族でも基本的に跡継ぎは男だけど、女が統治してる国もあるのよね」


「そういう国もあるにはあるけど、それは歴史の話になってくるからね」


「世界的には貴族や王族は男が継ぐものっていう国の方が圧倒的多数なのよね」


「そうだね、だからオルライトみたいに精力的に活動する女性は珍しいのさ」


「私はただ結婚しても仕事は続けたいだけだから、相手ぐらい選ばせろって話なのよ」


オルライトが結婚相手に求めるのは結婚したあとも仕事をさせてもらえる事。

だからこそ今回来た相手の束縛したがる性格はオルライトには水と油である。


オルライトが相手に求める条件を飲んでもらえないのなら全てお断りという事らしい。


「なんにせよお父様も約束は守ってくれたみたいで安心したわ」


「オルライトの父上もあれで約束は守る人だからね」


「それはあるのよね、お父様も約束だけは守る人だから」


「オルライトが想像以上の結果を残した事にも驚いてるんじゃないかな」


「それはありそう、まさかここまでやるとは思ってなかったのかもしれないし」


オルライトが残した結果は周りの想像以上に大きなものなのだろう。

だからこそ父親も約束を守るしかなかった。


それはオルライトが本気になったという事でもあるのだろう。


「なんにせよ任期もあと三ヶ月ぐらいだし、あとは出来る事を全部終わらせないとね」


「この様子なら正式に要請が来そうだね」


「その時を待つしかないけど、お父様もいい返事をくれそうね」


そんな父親からの手紙は現状の確認でもあった。

その上で返事を返し、その時を待つ。


任期が終わるまでもう少し、運命の日は確実にそこまで来ている。


オルライトの残した結果は想像よりもずっと大きいのだろう。

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