餅を作った
村の方も新年が明け移住者達と共に新年の祝いをした冬の村。
そんな中以前冬夕から聞いていて作ったものがあるという。
エルフが育てていたそれはもち米だった様子。
それを使って餅を作ったというが。
「いい匂いがするわね、これは何かを焼く匂いかしら」
「あ、オルライト様、餅というのを作ってみたんですが食べていきます?」
「餅?そういえばフユが以前言ってたわね」
去年から密かにもち米の栽培を始めていたというエルフ達。
それが食べられる程度には育ったとかで、餅を作っていた様子。
「お餅ってどうやって食べるのかしら」
「基本的には醤油を塗って海苔を巻いたり、大豆の粉末をかけたりとかですね」
「そういうものなのね、なら醤油でいただこうかしら」
「分かりました、少しお待ちを」
「それにしてもお餅なんて作れるようになっていたのね」
もち米の栽培はまず苗を手に入れるところから始めたという。
それが食べられるようになるまで試行錯誤していたとか。
そしてついに食べられるものが作れるようになったとのこと。
「美味しいわね、でも海苔なんかも知らない間に作れるようになってたなんて」
「漁村の人が海苔作りに挑戦して、秋頃に満足するものが出来たとの事ですよ」
「知らないところでいろいろやってるのね、私も聞いてないんだけど」
「まあそこはあれですよ、我々エルフもいろいろ自発的にやっていただけなので」
「とはいえ美味しいのならそれでいいわよ」
オルライトもその辺は見逃してくれるという。
実際美味しいものが作れるようにはなったのだから。
そんな餅もオルライトには好評なようで。
「美味しい食べ方って具体的に何があるのかしら」
「フユさんが言うには醤油やきな粉、あんこなんかが定番の味らしいですよ」
「ふーん、あんこって村でも作れるの?」
「小豆という豆は栽培はしていますから、砂糖があれば作れるかと思います」
「砂糖ね、村なら確かに砂糖は使えるけれど」
村ならオルライトが砂糖を作れるようにしたため、砂糖を使う事は出来る。
あんころ餅なんかにして食べるのは美味しいという事ではある。
ちなみにあんこはこっちの世界では珍しい食べ物らしい。
「あんこって作れるものなのね、砂糖があればいいのよね」
「はい、ただあんこに関しては使う量はかなり多いと聞いていますよ」
「だとしたらお金がかかりそうね」
「あとあんこだとお汁粉という食べ物もあるとか」
「お汁粉?あんこを使った汁物という事かしら」
お汁粉も作ろうと思えば作れるようではある。
あと小豆の栽培はしているので、赤飯なんかも炊く事か出来る。
尤も赤飯というのはこの国では食べる文化などはないが。
「お汁粉にもお餅を使うって事でいいのよね?」
「はい、あんこを使った汁にお餅を入れて煮込むんだとか」
「それもフユの世界の食べ物なのね、お餅の使い方も多様だわ」
「なんにせよあんこは作れますよ、時間はかかりますが」
「あんこを使った食べ物もいろいろ考えてみたいわね」
オルライトもあんこは気に入っている様子。
以前村で試作的に作ったものをいただいてから気に入ったという。
尤も豆を甘く煮るというのは言うまでもなく珍しいという事らしいが。
「でもあんこってやっぱり珍しいのよね」
「豆を甘く煮るっていう考えがそもそもないですからね」
「美味しいと思うのだけど、そういう食べ方がそもそもないのよね」
「あと小豆とお米を一緒に炊いた赤飯というものもあるそうです、めでたい日に食べるとか」
「赤飯、赤いお米っていう事よね?」
赤飯は小豆と一緒に炊く事で赤く着色されたご飯である。
ごま塩をかけて食べるのが美味しいが、ごま塩は作れるのか。
黒ごまと塩が必要なので、それが手に入るかどうかではある。
「お赤飯、小豆と一緒にお米を炊くなんて面白いわね」
「お赤飯はお祝いなどのおめでたい日に食べる事が多いそうですから」
「誕生日ケーキみたいな食べ物なのかしら」
「それは分かりませんが、様々なお祝いの時にお赤飯を食べると聞きました」
「お赤飯って豪華な食事という事もなさそうだけど、おめでたい日の食べ物なのね」
小豆の使い方はまたそれぞれ。
しかし餅に使うあんこは村でも作ろうと思えば作れるという。
村で餅が作れるようになり、オルライトも満足したようではある。
「でもお餅はとても美味しかったわ、他にも食べたいわね」
「腹持ちがいいので、食べ過ぎると満腹になりますよ」
「そればかりは仕方ないわね、とりあえずもう一つだけいただいていくわ」
もち米や海苔の生産に成功したという突然の話。
それによりまた新たな食べ物が村に誕生した。
あんこなんかも作れるが、砂糖は高いので簡単な話ではない。
しかしもち米自体は多様な事に使えそうだとオルライトは考えているようではある。




