強くなった自警団
冷たい風が吹くようになり冬はすぐそこまで来ている様子。
それに伴い温かい食事などが売れるようになってきたとの事らしい。
また冬は盗賊などが増える季節でもあるという。
畑などが冬のモードに入るため、食料泥棒も増えるのだとか。
「自警団も強くなったものね」
「おう、オルライト様、しっかり鍛え上げましたから」
「今や村に近寄る盗賊や山賊なんかはみんな返り討ちよね」
自警団はもはや統率の取れた騎士団クラスに強くなった。
それもあり村は住民のいざこざ以外は外部からの脅威はほぼなくなった模様。
「それにしてもエルネストの教え方は見事なものよね」
「俺だけじゃなくガウルの旦那もいたからこそですよ」
「確かに騎士団とは違うけど、強さの根源は教えていたものね」
「ええ、騎士の教えだけだともう少しお固くなってたと思いますし」
「なるほどね、そういうところは違う分野だからこそなのかしら」
エルネストの騎士団で培ったものとガウルが武人として培ったもの。
その両方があるからこその今の自警団の強さ。
やはり一つだけではなく複数の要素が組み合わさる事で生まれる強さなのだと。
「でも今村で働いてる元盗賊達以外にも盗賊いるものね」
「ええ、まあ村の自警団が強くなって外からの脅威はほぼなくなりましたから」
「それだけ強くなったって事よね、騎士団かと思うぐらいには強いもの」
「盗賊や山賊ってのはごろつきでありながら強い相手には基本的に向かってきませんから」
「相手も相手は選んでるって事なのね」
エルネスト曰く盗賊や山賊が襲うのは基本的に勝てそうな相手だという。
なので村の自警団の強さがここまでになった今、襲われる心配はまずない。
とはいえ盗賊や山賊に堕ちるのは基本的には貧しい人間なのだともいう。
「でも盗賊や山賊に堕ちるのは貧しいからというのも難しい問題よね」
「貧しさから抜け出すというのはとても難しいものなんですよ」
「そうね、施しを与えるにしても、それで解決という事にはならないもの」
「結局は金や食べ物を恵むより仕事でも斡旋してやるべきなんですよね」
「仕事の斡旋、村にいる元盗賊達はそれで立ち直ったわけだものね」
貧しい者達に金や食べ物を恵むのはかえって逆効果でもある。
人はそれにより恵んでもらえると信じ怠惰に堕ちていくのだと。
だからこそそれなら仕事でも斡旋してやるべきなのだとも。
「でも盗賊や山賊が生まれてしまうのは事情もあるって事なのかしら」
「差別されている事により仕事すらもらえない人達もいるわけですからね」
「ただそれでも施しを与えてしまえば、人はさらに堕ちていくと」
「俺も騎士としてそうしたものは見てきたんですが、こればかりは難しい話ですよ」
「盗賊や山賊は手先を使う仕事は無理でも、力仕事ぐらいなら出来るものなんじゃないかしら」
確かに盗賊や山賊はそれなりに腕っぷしの強い人は多い。
だからこそ肉体労働ぐらいは出来るものだと考える。
寧ろそれぐらいしか就ける仕事がないとも言えるわけではあるが。
「盗賊達は出来る事は少なかったけど、それでも力仕事で貢献しているのよね」
「個人で見れば特技なんかを持っている人もいるわけですし」
「盗賊や山賊は力仕事ぐらいしかないとはいえ、特技みたいなものがあると強いのよね」
「ええ、特技があるっていうのはやっぱり大きいんですよ」
「盗賊達も仕事を始めてから思わぬ才能に気づいた人も何人かいるし」
元盗賊達は基本的には肉体労働に従事している。
そんな中でも思わぬ才能に気づいた人も何人かいる。
だからこそ人はやってみないと分からないものだという事か。
「でも結局は仕事をすればきちんとお金がもらえるっていうのが大きいのよね」
「そうですね、村でのお給料は結構弾んでいるようですしね」
「まあ私の私財から出してるから、その辺はね」
「オルライト様、その私財、おいくらほどあるんです?」
「うーん、子供の時にお父様に資産運用を教わったから、たぶん30兆ぐらい?」
オルライト自身もいくらあるのかは細かくは把握してないらしい。
とはいえ最後に確認した時には30兆はあったという事なのだとか。
なので今はそれよりも増えている可能性はある。
「まあだから私財からお金を出しても懐は大して傷まないのよね」
「貴族で資産運用してるとか恐ろしいですね」
「元手はお父様から預かった500万から始めたのだから、相当増えてるわよね」
「それだけ増やせるって恐ろしい話でしかないですよ」
「だからお給料とかは全部私のポケットマネーよ、まずなくならないと思うしね」
オルライトの資産は最後に確認した時には30兆はあったとの事。
資産運用を始めたきっかけは、父親にお金の勉強で教わった時らしい。
その辺の教育で資産運用をさせるオルライトの父親も大概とも言えるが。
「なんにせよ自警団が強くなったから村の守りは当分安心かしらね」
「ええ、移住者にも自警団への参加希望者もいますしね」
「冬が来ればまた何かとありそうな季節になりそうね」
これから三度目の冬がやってくる。
四年目が終わるまでに住民一万人か税金一千万のどちらかを達成すること。
その約束を果たすべく一気にアクセルを踏む。
四年目の始まりもまた少しずつ近づいてきているのだから。




