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虫の鳴き声

すっかり秋本番になり村の木々も色付いてきた。

紅葉というのは異世界にもあるものである。

そんな中行商人からまた何かを買っている様子のオルライト。

何を買ったのかというと。


「この虫ってなんの虫か分かるかしら」


「こいつは鈴虫じゃねぇか、こっちにも鈴虫っているんだな」


「鈴虫っていう虫なのね、いい声で鳴く虫って言われたから買ったんだけど」


どうやらそれは鈴虫だった様子。


時期は少し過ぎているが、秋の夜中に鳴く鈴虫は風流なものである。


「この虫ってそういういい声で鳴くの?」


「ああ、夜になると鈴の音みたいな感じで鳴くんだよ」


「それで鈴虫なのね、納得だわ」


「でも鈴虫を買うっていうのも不思議な話だな」


「行商人が定期的に村に来るのよ、珍しいものをいろいろ持ってくるのよね」


その行商人はオルライトの事を気に入っているのは確かなのだろう。

だからこそ様々な珍しいものを売りに来る。


とはいえそれを即決で買うオルライトもどうかと思うが。


「それで鈴虫って珍しいのかしら」


「こっちの世界の事は知らないけど、秋の夜に鳴き声を聞かないなら珍しいだろ」


「なるほど、でも鈴の音みたいな鳴き声って凄いわね」


「オルライトは虫とか平気なタイプなんだな」


「そうね、虫は特に怖いとかそういう事はないわ」


オルライトは虫を怖がったりする様子は特にない。

寧ろ普通に手で掴んだりも出来るようである。


なので鈴虫を買うのにも抵抗はなかったのだろう。


「フユの国にも鈴虫っているのかしら」


「田舎なんかに行くと秋の夜は鈴虫の鳴き声がするぞ」


「へぇ、風情があるのね、素敵じゃない」


「まあ鈴虫ってそれこそ夏から秋への変わり目ぐらいの時期に鳴く虫だからな」


「ふーん、とはいえ鈴虫はそういう季節を感じさせる虫なのね」


鈴虫とはそういう季節を感じさせる虫なのは日本ならでは。

なんにせよオルライトが買った鈴虫は寝室にでも置いてみるとする。


虫かごは細工の得意な女ドワーフにでも頼むとする。


「この鈴虫って何かに使えたりしないかしら」


「繁殖させて売りに出すとかそういう事か?」


「でも夏から秋への変わり目ぐらいの時期に鳴く虫なのよね?」


「ああ、だから冬なんかはそんな鳴くような虫でもないしな」


「とはいえこの季節なら鳴いてくれるのかしら」


今は秋が深まってきた時期なので、恐らくは鳴いてくれるはず。

その鳴き声をどう感じるかはまた人次第。


オルライトもとりあえず寝室に置いてみるという事にする様子。


「でもあの行商人はどこからこういうのを仕入れてくるのかしら」


「たぶん独自の仕入れルートでもあるんだろうよ」


「そうねぇ、とはいえ生き物を運べるからにはそういう事なのかしら」


「なんにせよ鈴虫の鳴き声はいいもんだよ、アタシは好きだよ」


「フユにとっては望郷みたいな感じなのかしら」


冬夕も都会生まれというわけでもない。

なので鈴虫の鳴き声は割と経験しているのだろう。


だからこそ懐かしいと感じるのかもしれない。


「でもフユも虫は平気な方なのかしら」


「アタシも虫はそんな苦手ってわけでもないな」


「そこは共通点なのかしら、なんか嬉しいわ」


「実際田舎で暮らしてると、窓を開けてると虫が家の中に入り込んでくるからな」


「それで苦手という事でもなくなったのね」


冬夕曰く田舎だと窓を開けていると家の中に虫が入ってくるという。

そうした経験から虫はそんな苦手でもないとのこと。


なお虫は光に集まる習性を持つものが多いのもあるのだろう。


「鈴虫って鈴の音みたいな音で鳴くのよね?」


「ああ、リンリンと鳴く虫だよ」


「虫の鳴き声も様々なのねぇ、こっちだと鈴虫なんて見た事もないし」


「国が変わると生息してる虫なんかも変わってくるんだろ」


「それはありそうね、行商人も東の国って言ってたし」


行商人は東の国にも行ける程度には財力があるという事か。

オルライトもそうした異国の珍しいものには目を輝かせる。


中身は割と男の子みたいなところがあるのがオルライトなのだ


「あの行商人は実は凄い人なのかしら」


「そこまでは分かんないけど、話を聞く限りじゃ相当な金持ちだろ」


「まあ貴族自体が承認が財を成したから貴族になったみたいな話は多いものね」


「そう考えるとその行商人も貴族だったりするのかもな」


「そうね、実は名門貴族の子息とかなのかも」


その行商人も実は貴族なのかもしれない。

そもそも貴族とは承認が財を成した事で、それを認められ国から貴族の位を授かるなどが多い。


実はその行商人も貴族の子息とかなのだろうか。


「なんにせよ鈴虫についてはある程度は分かったわ」


「季節的にはそろそろ鳴かなくなる時期だろうしな」


「夏から秋にかけて、とりあえず餌でもあげてみましょうか」


鈴虫はとりあえず寝室に置いてみる事に。

虫かごはドワーフ辺りに頼んでみる事にした。


鈴虫の鳴き声はオルライトにはどう聞こえるのか。


虫が平気なのはお転婆貴族の片鱗を覗かせる。

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