盗賊達の変化
村は完全な秋の陽気になったようで風が肌寒くなってきた。
そんな中でも村の発展は続いていく。
村が大きくなるにつれ村人達も意識の変化が生まれつつある。
国の計画とはいえ村は確実に発展しているのだから。
「あら、相変わらずみたいね」
「これはオルライト様、ええ、おかげさまで」
「それにしても盗賊をやってたとは思えないぐらい馴染んだものね」
元盗賊の人達は今はすっかり村に馴染んでいる。
盗賊とは言うものの、元々悪い人という事でもないのだろう。
「盗賊をやっていたのが信じられないわよね」
「盗賊とは言うものの、ガチの悪事は働いてなかったですしね」
「貧しさから盗賊になってただけっていう事だものね」
「まあどんなにいい人でも盗賊をやってた時点で罪人なのは確かですけどね」
「村の発展が終わったらどうするの?嫌でなければ私が保証人になるけど」
盗賊達は村の開発が終わったらどうするのか。
オルライトは引き取る形で身元を引き受けてもいいという。
盗賊達は罪の償いは必要だが、本人達に罪の意識はあるようである。
「でも盗賊達は本当に変わったわよね」
「ええ、元々悪人っていう訳でもなかったですしね」
「村の人達に好かれてるのは、人柄なのかしら」
「盗賊とはいえ何かとあった人達ですからね」
「貧しさっていうのはそれだけ人を苦しめてしまうとも知ったしね」
オルライトが知ったのは生きていくために悪事に手を染める人がいるという事。
それは真面目に働きたくてもそれを許さない環境があるという事。
だからこそ盗賊達は今はこうして村に馴染んでいるという事なのだから。
「でも村の人達も意外とすんなり受け入れたわよね」
「むせの人達の人のよさに触れてそれだけ変わったんでしょうね」
「本人達の覚悟も知ったからこそなのかしらね」
「まあ村に残るのもありかとは思ってますよ」
「ならそれも含めて今後は考えているとい事なのね」
盗賊達はオルライトがいるからこそここにいられる。
村の開発が終わったらその時はどうするのかはその時に考える。
今はオルライトに恩を返す事だけを考えているという。
「盗賊になるのにも理由があった、貧しさにも理由があるのね」
「貴族に平民の事は分かりませんよ、その逆もまた然りです」
「まあそれについては否定はしないわね」
「平民に貴族の世界は理解が出来ない、その逆もまた然りでしょう」
「恵まれた人っていう事よね、結局は」
盗賊達は元々貧しい人達の集まりだ。
だからこそ分からないものは分からないという。
平民と貴族はお互いその世界の事を知らないで生きているものなのだから。
「貴族への印象は少しは変わったのかしら」
「まあ印象は変わりましたね、想像よりいい人というか」
「私も平民達がいい人だと知っていろいろ変わったわよ」
「お互いにそういう世界で生きてきたっていう事ですからね」
「だから貧しさの理由も含めてという事なのよね」
貧しさの理由とはなんなのか。
オルライトは盗賊達に触れてそれを知った。
貴族も平民も自分達の世界で生きているという事なのだから。
「盗賊になるぐらい貧しかったというのはそれだけ仕事がなかったのよね」
「ええ、そういう人達が集まって出来たのが盗賊団ですから」
「そう考えると生きるのにただ必死だったっていうだけ、そういう事なのよね」
「世の中にはその日の飯を食うお金もない人がいるんですよ」
「貴族がなぜ貴族と言われているかという事なのよね」
貴族とは何かしらの成功者の事である事は多い。
商売などで富を築いたものが貴族と呼ばれている。
生まれながらにして貴族だったという人などいないのだ。
「貴族も最初の人は何かしらの苦労があったものなのよね」
「貴族がなぜ貴族と呼ばれているのか、そこからですから」
「王様も貴族も初代の人は何かしらの成功を収めた人なのよね」
「国だって王様が興したんじゃない、興した人が結果的に王様と呼ばれているだけなんですよ」
「でもそんな初代の事を知っている人はそんなに多くない、不思議とね」
盗賊だってしっかり学べば貴族になれる。
その一方で貴族もある日突然転落するかもしれない。
そこは何かしらの功績を残したからこそのシステムなのだろう。
「でも盗賊だったなんて今を見たら信じられないものよね」
「あいつらも暖かさっていうののは知ってるんですよ、それを感じられてなかっただけで」
「人の暖かさ、こんな田舎でも感じられるものなのね」
盗賊達は暖かさに飢えていたのかもしれない。
だから結果として村にすぐに馴染めたという事なのか、
この村の発展には欠かせない戦力に変わった盗賊達。
オルライトもそんな盗賊達の事情は汲んでやっているのだろう、きっと。




