涼める場所
夏が近づき気温も高くなってきた季節。
そんな中夏の暑さはやはり労働意欲などにも影響すると分かっている。
なので夏の間だけでも涼しくなれる何かを考える事にした。
夏に涼しくなれるといえば食べ物や薄着になる事、他には何があるのか。
「ねえ、この辺りって地下水も結構豊富だったわよね?」
「ええ、井戸水なんかは冷たくて美味しい水が出ますが、それが何か?」
「これから夏になるし、涼める施設が欲しいかなと思ってね」
オルライト曰くこれからの夏に備え涼める休憩所みたいなものを考えているとか。
温泉施設は調査結果から採掘が進み、今年の冬を目処に開業出来そうなのでそのついでらしい。
「涼める施設、水浴びとかが出来る施設を作りたいなと思ってね」
「だとしたら、水着で入る施設という事でいいんですかね」
「一応それで想定してるわ、フユから聞いたんだけど、プールっていうものがあるらしいの」
「プールですか、だとしたら水温の管理とかも必要になるのでは?」
「一応夏に利用する事をメインとしてして想定してるから」
オルライト曰く冬夕から聞いたプールの話に興味を持った様子。
近くに海はあるものの、海水浴はリスクも多少はあったりする。
なのでプールのような施設を作ろうかと考えたようだ。
「実際上手くいくと思うかしら」
「そうですねぇ、夏に利用する事がメインならいいんじゃないですか」
「そう、だとしたらあとはどうやって水を引くかよね」
「そこは地下水の採掘をするしかないんじゃないですかね」
「それか大きな水道施設が必要になってくるのよね」
プールの規模を満たすにはそれなりに大きな水道施設が必要になる。
水道施設は領主の管轄であるので、言えば水は引いてもらえる。
ちなみにこの村に水道を引いているのは隣町にある水道施設らしい。
「それだけ大量の水を引いてもらえるか交渉しないといけないのよね」
「でも今から施設を作って間に合うんですかね?」
「小規模なものなら間に合うと思うわ、大きなものは別に作るとして」
「つまり大規模なものは来年の開業を想定して、今年は小規模な水浴び場みたいなのを作ると」
「その場凌ぎではあるけど、水浴びが出来れば涼めるとは思うのよ」
来年はオルライトの領主代行最後の年である。
それでも限界までやれる事をやるつもりだしやり切るつもりでいる。
まずは今年の夏を想定して小規模な水浴び場を作ってみようと考えているようだ。
「どこまでやれるかは未知数だけど、あったらいいなと思ったのよね」
「そうですねぇ、子供から大人まで涼める水浴び場はあるなら嬉しいとは思いますよ」
「水着に関してもヴィクトリエルがいるから、用意出来るしね」
「その小規模な水浴び場を作るとして、屋内施設なんですかね?」
「一応それで想定してるわよ」
オルライトが想定しているのは小規模な水浴び施設。
シャワーや小規模なプールなどである。
急ぎの工事にはなるが、それなら夏に間に合うと計算しているようだ。
「とりあえずは問題はなさそうかしらね、計画書を取りまとめなきゃ」
「でも水浴びですか、夏は暑いですから、涼めるっていうのはいいリラックスになりますね」
「そうなのよね、海水浴は危険もあるから、そういう施設があった方がいいと思ったのよ」
「確かに海水浴だと沖まで行ったりとか、海賊の危険なんかもありますしね」
「だから水浴びの出来る施設があれば村で涼めると思うもの」
海には様々なリスクがある。
目を離す危険や海賊の危険、また海の生物に刺されたりする危険もある。
なので水浴びの施設を作ってしまおうという事のようだ。
「それにこの村の地下水は冷たいっていうのもあるし、ちょうどいいのよね」
「ただ冷たいままだと適度に温まらないと危険もありますよ」
「流石に冷えすぎないようにはするつもりではいるんだけど」
「まあやってみないと分からないですし、計画書が出来たら教えてください」
「ええ、任せておいて」
とりあえずは小規模な水浴び施設をまずは作る事となった。
大規模なプールは来年の夏の開業を目処に計画する。
夏は涼める場所があるというだけでかなり楽になりそうだ。
「水を引くのと、それを溜められる場所の確保かしらね」
「完成したら俺も利用させてもらいますわ」
「ええ、夏本番までには終わらせるわよ」
「工場の建設も一段落してきてるのでちょうどいいでしょうしね」
「水がそれだけ必要になる事も含めてだけどね」
工場が建った事で水の消費量は一気に増える。
とはいえ近くに海もあるという事で水資源は豊富な土地ではある。
あとは順次着工するのみだ。
「夏の暑さに備えないとね」
「今年も暑い夏が来るんですねぇ」
「涼めるっていうのは大切よね」
そんな夏に向けての計画が動き出す。
最後の最後までやれる事をやるつもりだしやり切るつもりでいるオルライト。
それは責任であり、目的を意地でも達成するという強い決意。
婚約解消のために出来る事はなんでもする覚悟なのである。




