アイスは作れるか?
夏も目の前に迫り確実に暑くなり始めた季節。
そんな中暑い日にはやはり冷たい飲み物などが欲しくなるという冬夕。
こちらの世界にも冷やす技術はあるが、普及はまだしているとは言い難い。
なお冷たいものといえばやはりアイスや冷たい飲み物のようで。
「フユの世界も今は春なのよね?」
「ああ、まあ春って言っても初夏みたいに暑いけどな」
「フユの世界の気象ってどうなってるのかしら」
そんな中オルライトは何か新しいものをまた考えている様子。
そこで相変わらず冬夕に何かないかと聞いてきているようで。
「ねえ、何か夏に名物に出来そうなものとかない?」
「そう言われてもな、うーん、ならアイスクリームとかどうよ」
「アイスクリーム?それはお菓子か何かかしら」
「ああ、簡単に言えば氷菓子みたいなもんだよ」
「氷菓子ねぇ、でもそれはつまり凍らせられなきゃいけないんでしょ?」
アイスを作るには言うまでもなく凍らせる設備が必要になる。
そこにミルクやバニラ、果物や砂糖などが必要になる。
砂糖などは村でも生産が本格化している事もあり、確保は出来そうだが。
「凍らせる設備ね、作らせるのは時間的に間に合わない気がするから既製品を買うとして」
「アイスにもいろいろあるんだよ、かき氷にジェラートやシャーベットとかな」
「でも共通してるのは凍らせて作るっていう事なのよね?」
「ああ、あと必要なのは牛乳と砂糖とかバニラ、果物なんかだな」
「バニラ?それって確か熱帯の地域なんかで育てられてるものよね?」
バニラは言うならば味付けに使う実の事でもある。
それを使い甘い味をつけるのに使うものだ。
なおバニラエッセンスをなめると酷い目に合うので決してなめてはいけない。
「バニラは取り寄せないといけないし、夏までに間に合うかしら」
「アタシの世界だとバニラが定番だけど、別に味は他にもあるしな」
「つまり果物の味とかでもいいって事なのよね」
「ああ、チョコレートの味なんかもあるけどカカオが手に入るのならありかとは思うぜ」
「カカオは取り寄せないといけないから、候補からは除外かしらね」
こっちの世界にもカカオやバニラは存在する。
とはいえ村のある場所では育たないため、エルフですら地理的理由により栽培出来ない。
なので実を産地から取り寄せるしかないのだという。
「とりあえず果物の味のアイスなら作れるとは思うわよ」
「なら問題ないんじゃねぇのか」
「凍らせるための設備を西の国から買わないといけないけどね」
「あとはアタシの世界だと夏は冷たい飲み物も定番だな」
「冷たい飲み物なんてあるの?」
こっちの世界では冷たい飲み物は珍しいものなのだという。
飲み物は基本的にホットで飲むものであり、冷たい飲み物はごく一部の地域や国にあるのみ。
夏はそれが美味しいのだが。
「冷たい飲み物って要するに普段はホットで飲むものを冷やして飲むのよね?」
「ああ、アイスティーとかアイスコーヒーなんかは定番だな」
「紅茶まで冷やして飲むの?美味しいのかしら」
「美味しいぞ、アタシはアイスティーに果物のフレーバーを使うのが定番だな」
「果物の味をつけた冷たい紅茶、なんか想像出来ないわね」
夏の冷たい飲み物といえば庶民の家には多くあるであろう麦茶だ。
大麦から作る麦茶は日本の定番の味である。
冬夕の家にもお約束のように麦茶があるという。
「他には何かないのかしら」
「他にはねぇ、なら庶民の家の多くにあると思う麦茶とかどうだ?冷たい麦茶は美味いぞ」
「麦茶?麦からお茶を作るっていう事なの?」
「麦って言っても小麦じゃなくて大麦だけどな」
「大麦、村で作ってたかしら…あとで聞いてみましょうか」
麦茶を作るのに使う麦は大麦である。
日本の家庭の多くにあると思われるそれが麦茶だ。
簡単に作れて量も作れるのは大きいものなのである。
「その麦茶っていうのは大麦のエキスをお茶にするみたいな感じでいいの?」
「うーん、ティーバッグに入った大麦に水を入れて作るのが一般的ではあるな」
「ティーバッグ?それってつまりお茶を入れるのにそういうものがあるの?」
「ああ、紙の袋に茶葉とか大麦が入ってて、水やお湯を入れるとお茶とかになるんだ」
「便利なものがあるものなのねぇ」
ティーバッグは異世界である以上なくても無理はない。
とはいえ別にティーバッグがなくても麦茶は作れるだろう。
大麦は村でも育てていたはずなので、相談してみる事に。
「ティーバッグって要するに水に濡れても破れない紙の袋って事よね?」
「ああ、そこにお湯や水をいれるとティーバッグの茶葉とかが飲み物になるんだ」
「なるほど、袋に入れた茶葉なんかがお湯や水をいれるとそのまま飲み物になると」
「基本的には使い捨てだけど、庶民の強い味方だしな」
「いろいろ面白いものね、フユの世界は」
そんなアイスや冷たい飲み物の計画はやってみる事にした様子。
夏の暑い季節に冷たいアイスや飲み物は美味しいのだ。
受け入れられるかは分からないが、何事もやってみてこそだ。
「とりあえず面白い話をありがとうね」
「冷たい麦茶は夏には美味いもんだしな」
「庶民の家の多くにある麦茶、なるほど」
そんな夏に向けての計画は決まった様子。
まずは冷凍庫を西の国から取り寄せる事にする。
東の国は機械がそこまで浸透していない国でもある。
村からそうしたものを浸透させていくのもいいかもしれない。




