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暑くなってきた

外も暑くなり始め夏が確実に近づいている事を感じさせる。

そんな中工場は稼働し始めたし、マグルの親方も仕事に復帰した。

そして夏になると海の方も海賊などが活発になってくる。

とりあえず警戒は強めた上で村で出来る事をしていく事に。

「あら、その魚はまた大漁みたいね」

「これはオルライト様、まあ大漁なんだけど、もうすぐ夏だろ」

「そうね、魚は腐りやすいから、冷やして保存しなきゃいけないし」

海賊達は今は海岸沿いの方で主に漁業に勤しんでいる。

なので魚を使った料理などは海賊達の貢献も大きいようだ。

「それにしてもこの辺りって魚がよく穫れるのねぇ」

「元々漁村だったって聞いてるからね、魚が貴重な稼ぎだったんだろうさ」

「でも輸送の難しい魚で稼げていたものなのかしら」

「何か保存する手段でもあったんじゃないのかな」

「それか保存食にして売っていたとかかしら」

魚の保存に使う機材などは当然高いものだ。

オルライトも開発を頼んでいるが、既存のものでもいい値段がする。

それに加え東側の国は機械がそこまで浸透していないのもある。

「でもこれだけ魚があればいろいろ作れそうね」

「ああ、魚の他にこういうのも穫れるんだけど」

「これはイカとかタコね、焼いたり唐揚げにすると美味しいのよね」

「唐揚げっていうのは小麦粉とかをつけて揚げる揚げ物の事だっけか」

「ええ、今では食堂なんかでも出されるけど、意外と人気なのよ」

唐揚げなんかは冬夕から聞いて試作してその結果人気になったものでもある。

食堂では村の労働者達が気軽に食べられる料理も増えている。

魚もフライにしたり焼いたりなど村の中では結構消費されているのだ。

「それにしても魚はこれからは輸出にも力を入れたいんだけど」

「保存が出来るならそれもいいとは思うよ」

「ええ、ただやっぱり保存の問題はつきまとうのよね」

「それは仕方ないさ、海賊達でも魚は獲ってすぐに食べてたんだからね」

「保存に使う機械は作らせてるけど、完成はまだかかりそうだし」

なんにせよ魚の問題はこれから解決していく問題ではある。

村の中では食堂で食べたり、加工品にしたりする事が主ではある。

とりあえずこれからは夏なので、魚が痛みやすくなる季節が来るという事だ。

「そういえば海賊達は魚の料理の知識とかはあるの？」

「ある程度はあるよ、海賊だと根城は島だったり船の上だったりしたからね」

「ならそういう料理も教えてもらえないかしら」

「それは構わないけど、口に合うかは食べてみないと分からないよ」

「それでもちょっと気になるから、海賊の料理とかも食べてみたいし」

そういうところに興味を示すのはオルライトらしいとも言える。

海賊達の料理は決して上品とは言えないものの、魚の美味しい食べ方は知っているらしい。

なのでせっかくなので今回摂れた魚でいろいろ作ってもらう事にした。

「でも海賊達って想像以上にたくましいものなのね」

「まあ元々は売られた貴族の娘達の集まりなんだけどね」

「それが海賊に気に入られたっていう事だったわよね」

「ああ、お頭があの時立ち向かわなかったら今頃はここにはいないよ」

「でも運命っていうのは分からないものね、私でも驚く話よ」

海賊達の運命の分岐点は襲われた時に立ち向かった事なのだろう。

それが当時の海賊の頭に気に入られ、海賊の女となった貴族の娘達。

元々のお頭が戦死してからはその旗を受け継ぎ海賊となったという事も。

「海賊としての知識とかもそのお頭から教わったのよね」

「ああ、海賊は悪い奴なんて言われるけど、あたし達には恩人なんだよ」

「複雑な話ってあるものなのねぇ」

「それでも当時のお頭がやってたのは所詮は賊でしかない、討たれるのも仕方なしさ」

「海賊がどんなにいい事をしても、それまでにやってきた事がなくなるわけじゃないものね」

当時の海賊に気に入られていろいろ教わった貴族の娘達。

それでも海賊は所詮は海賊でしかなく、国から見たらただの賊でしかない。

討たれるのも仕方ないのだと彼女達も理解はしていたのだろう。

「でも今はこうして村のために働いてくれてる、それは嬉しいわよ」

「オルライト様はどこまでも変わり者だと思うし、それをお頭も気に入ったんだと思うよ」

「変わり者って、私ってそんな人に見られてるの？」

「少なくともスカウトされた人達はそう思ってるんじゃないのかね」

「なんか不服だわ、私ってそんなつもりもないのに」

オルライトが気に入られているのはその行動力にあるのだろう。

強い信念があり、それを曲げる事をしないという事にある。

尤も本人は結婚したくないからという当初の目的に一切のブレはないのだが。

「とりあえず魚料理を教えてくれるかしら」

「はいよ、それじゃ食堂でも借りるとするかね」

「ええ、期待してるわよ」

海賊達が食べていた魚料理。

それは上品ではないが海の男達から教わった味でもある。

魚の美味しい食べ方は海賊だから知っているとも言える。

今は漁師に転向した海賊達の海の飯である。