最初の工場
少しずつ暖かくなり季節は春本番へ。
そんな中建設を始めていた工場の第一号が完成した様子。
複数の工場を並行して建設している中での第一号である。
そこで様々な仕事をまとめて引き受けられるのは産業の強化にも繋がる。
「仕事が早くて助かるわね」
「まあな、大工としてこういうもんも建てさせてもらえるのはいい経験よ」
「とりあえず第一号、あとは設備の運び込みとかかしらね」
工場が建ったのはいいが、まだ設備などが完全ではない。
そうしたものを運び込み、稼働するようになってからが本番である。
「とりあえず第一号が完成しただけでも一安心かしらね」
「他の工場も順次完成していくと思うぜ、そうすりゃ大工仕事もさらに捗るしな」
「確かに建材や資材をたくさん作れるようになるっていうのは仕事としても大きいわね」
「んじゃ俺は別の仕事に合流してくる、オルライト様も仕事はしっかりな」
「それにしても仕事が速い上に、しっかりとやってくれるのは嬉しい限りね」
そんな工場で使う設備は主にマテリアルハンドに作らせている。
先日頼んだ冷凍保存用の機械とは別に、その前から工業機械の製作を依頼していた。
それらを工場で使う事になるわけで、使い方もしっかり覚えねばならない。
「やっぱり工場があると見栄えも違うものね」
「お、工場が建ったのか、流石は本場の大工、仕事が速いね」
「あっ、親方さん、もう体の方はいいんですか」
「まだ完全じゃないけどな、とはいえ息子のマグルに任せっきりだったのもあるからな」
「仕事には復帰出来そうなんですか?」
様子を見に来たのはマグルの父親の親方さんだった。
マグル曰く体の方はだいぶ回復したそうで、夏頃には仕事に復帰出来るそう。
親方さんもオルライトが連れてきた大工やドワーフから今は話を聞いて回っているそうな。
「親方さんはまだ現場復帰は先なのかしら」
「夏頃には復帰出来るさ、今は大工やドワーフから話を聞いて勉強中だ」
「あら、頼もしいわね、なら期待してもよさそうかしら」
「おう、任せとけ、んじゃオルライト様も仕事に励めよ」
「親方さんも大体はよくなったみたいで安心したわね」
親方と入れ替わりでマグルが姿を見せる。
親方もそれなりにいい歳なので、そろそろ仕事を引退してもいいような年齢だ。
とはいえ親方本人にはそんなつもりは毛頭ないようで。
「マグル、見てたわよね?」
「ああ、親父もまだまだやるつもりらしいし、もう若くないってのにな」
「でも人は後継者がいないと引退も決断しにくいものなのよ」
「それは分かってるさ、でも後継者なんてそんな簡単に見つかるわけがないのにな」
「マグルが継げばいいんじゃないの?」
マグルは親方を継ぐつもりではあるという。
とはいえ正式に継ぐのはまだ先になりそうだとも。
職人の後継者問題は結局はその技術をきちんと伝えられるかどうかが大きいのだろう。
「親方さんは技術の継承はしっかり出来ているのかしら」
「一応俺が出来てるんだから、たぶん問題ないとは思うぞ」
「とはいえ後継者が一人だけっていうのも不安は残ってくるんじゃないの?」
「親方を継ぐのは俺だろうけど、技術自体は複数人に実演して見せてやるって言ってたぞ」
「ふーん、だとしたらそこはある程度は受け継がれるのかしらね」
親方の技術は大工やドワーフも感心する程度には洗練されているという。
とはいえ本物にはやはり敵わないのか、その辺りからきちんと吸収しようとしている様子。
もう若くないというのに向上心の衰えは一向に感じさせないようである。
「なんにせよ親方さんが元気になったようで安心したわ」
「オルライト様もちょくちょく見舞いに来てくれてたのが嬉しかったみたいだぜ」
「あまり大した事は出来なかったけどね、まあ結果はよかったのかしら」
「村の発展に親父が加わるなら戦力としては申し分ないしな」
「一人でそんな大きな戦力とは思わないけど、ベテランの存在は大きいものね」
やはりこういう現場においてベテランの存在は大きいものだ。
ドワーフや大工達も技術こそ優秀だが、まだ若い方である。
そこにベテランの親方が入るのはいろんな意味で大きいのだから。
「とりあえず工場の稼働に向けて設備の搬入とかを始めないと」
「組み立てとかも覚えたから、その辺は力になれるぜ」
「あら、頼もしい、なら頼むわね」
そんな発展に向けて大きな戦力となるマグルの父親の親方。
比較的若手の多い大工やドワーフにとってもいい人材となるだろう。
とはいえ無理だけはするなとマグルもそれに釘を刺す。
親方が復帰する夏からはその辺りにさらにブーストがかかりそうだ。




