寒くても生足
すっかり春の陽気になったがその一方で冬夕の世界は真冬である。
学校は始まっていると言うが、相変わらず学生服姿で転送されてくる。
そんな学生服姿の冬夕を見てオルライトはふと思う。
あっちって冬なんだと聞いているが…と。
「ねえ、フユの世界って今は冬なのよね?」
「そうだが、真冬で寒くて敵わないぜ」
「上着はコートとかを羽織ってるのに、なんで足だけ生足なの?」
オルライトの疑問、それは上はコートなどを着ているのに足は生足という事。
真冬なのに靴下だけは履いているものの生足に短いスカートという標準装備である。
「その短いスカートと生足でよく寒くないわね」
「いや、普通に寒いが、寧ろ寒くて敵わないぞ」
「…それなのにオーバーニーソックスとか履かないのかしら」
「あー、あたしの国だとそういうのはあまり見ないな」
「そうなの?寒いのに足を保護する靴下が短すぎない?」
ちなみにこっちだと貴族なんかは普通にタイツ着用だったりする。
それこそ膝上の付け根の辺りまであるタイツ着用は珍しくない。
日本だと靴下は基本的にはハイソックス辺りまでしか見ない気がする。
「寒いのにハイソックス辺りまでしか履かないのは流石にどうなのよ」
「そう言われてもな、別の学校なんかではそういうのも履いてたりするんじゃないのか」
「つまりフユの学校ではそれが指定だったりするのかしら」
「一応な、まあ探せばタイツとかオーバーニーソックスはあると思うが」
「ふーん、でもなんならその中間ぐらいでもあっていいと思うけど」
ちなみにオーバーニーソックスとタイツの中間だとストッキングだったりする。
異世界にはタイツはあるがストッキングはないようである。
オルライトも普段からタイツ着用なのでそういうところは驚いているようだ。
「それにしても真冬にその生足、見てるだけで寒くなるわね」
「こっちは今は春だから、暖かくて嬉しいけどな」
「元の世界に戻ったら寒くて敵わないのでしょう」
「まあそうなる、とはいえ冬の寒さも慣れたもんだよ」
「フユってもしかして寒い地方の出身だったりするのかしら」
冬夕の実家は水産加工会社である。
なので実家があるのは寒い地方だという事になるのだろう。
今でこそ都会で暮らしているが、帰省した時の寒さは故郷に帰ってきたとなるらしい。
「寒い真冬に生足なんて、足が冷えて仕方ないんじゃないの」
「まあ今住んでるとこよりも、実家のあるとこの方がずっと寒いしな」
「フユが寒さに強いのが分かった気がするわね」
「実際実家の方だと冬に生足なんてクソ寒いしな、それでもみんな生足だったぜ」
「同じ学校の女生徒がみんな生足とか、イエティもびっくりよね」
実際そんな環境で育った冬夕は真冬に生足でも意外とケロッとしている。
寒いのは寒いが、その程度の寒さはなんのその。
真冬に生足など大した問題ではないのだろう。
「でも真冬に生足でも平気なんて、逞しいのねぇ」
「都会ではそうでもないけど、アタシの実家の方とか冬はクソ寒いからな」
「そんな環境でも生足なんて恐ろしい話だわ」
「こっちだとタイツとかが充実してそうでいいな」
「でもフユの世界の靴下とかはモコモコで暖かそうじゃない」
実際の話そこは使われている素材の話になるのだろう。
確かに冬夕の靴下なんかは冬でも結構足が温かい。
それは技術がきちんと向上してきたからこそなのか。
「ただその寒さで生足っていうのはなかなかに強いのね」
「本当はもっと暖かいやつを履きたいんだけどな」
「つまり学校に行く時は生足だけど、私生活ではもっと暖かいのを履いてるのかしら」
「私生活ではな、それこそ毛糸の靴下とか暖かくていいぞ」
「毛糸の靴下、そういうのもあるのね」
そんな毛糸の話を聞いて何か閃いた様子のオルライト。
毛糸の素材について再度冬夕に聞いてくる。
毛糸は何から作られるのかという事を。
「ねえ、その毛糸って何から作ってるの」
「毛糸?基本的には羊毛、羊の毛だと思うぜ」
「羊毛、羊の毛、なるほど」
「またなんか思いついたな、まあ好きにすればいいと思うけど」
「ええ、思わぬ形でアイディアは降ってくるものね」
恐らく羊に関係する何かを閃いた様子のオルライト。
まあやるならやってみる事は大切なのだろう。
なお毛糸は静電気が溜まりまくるので、迂闊に金属に触るとバチッとする様子。
「とりあえず面白い事になりそうね」
「やれやれだな」
「とりあえずヴィクトリエルと相談しなきゃ」
恐らく羊毛関係の何かを閃いた様子のオルライト。
ヴィクトリエルと相談するという事はつまりそうなのだろう。
何事も挑戦が大切という事は確かではあるが。
次は何を始めるつもりなのかは本人の頭の中に。




