表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/210

向こうは年明け

春の陽気に眠気も襲ってくる穏やかな季節。

とはいえ仕事をしないといけないのは変わらないので、きちんと仕事はする。

そんな中冬夕の世界では新年になっていたようで、季節の違いも感じる。

正月だろうと容赦なくこっちに転送させてくるのである。


「フユのその服ってなんなのかしら」


「晴れ着ってやつだよ、新年が明けて初詣に行ってただけだ」


「初詣、それは年明けのイベントなのかしら」


年明けの晴れ着のまま転送されてきた様子の冬夕。


その晴れ着は異世界の人からしたらやはり珍しいのか。


「晴れ着っていうのはおめでたい日に着る服っていう事なのかしら」


「大体そんな感じだな、普段から着るような服ではねぇな」


「でもその晴れ着の生地って凄いよさそうな感じがするわね」


「まあ和服自体生地がそれなりにいいものだったりするしな」


「そういうおめでたい日に着るものだからこそなのかしら」


和服というのは着るのも結構大変なもの。

冬夕自身も母親に着付けてもらったのだという。


ちなみに正月で実家に帰省していた時にこっちに転送されてきたようだ。


「でも普段の学校の制服じゃないフユを見るのは新鮮よね」


「アタシだっていつ転送されるか分かんねぇからな」


「その転送の魔法は本当に気まぐれなのね」


「それに向こうとこっちだと時の流れも違うし、まあ何かあるってわけでもないけどな」


「でもフユの世界の衣服っていい生地のものが多いのね」


晴れ着というか和服の生地はこっちでは立派なものに見えるようだ。

その辺は世界の違いでもあるのだろうが。


とはいえ帰省中に転送されるというのも、本当に突然という話である。


「でもその和服っていうのはなんとなく窮屈そうにも見えるわね」


「着るのは面倒だしな、これも母さんに着付けてもらってるんだし」


「人に着せてもらう服っていう事なのね」


「ああ、多くはそんな感じなんだよ」


「自力で着るのが難しい服っていうとこっちだとドレスになるんだけど」


こっちの世界ではドレスは基本的に誰かに着付けてもらうもの。

ドレスは特別なパーティーなどで着るものだからこそなのか。


冬夕の世界の和服のようにこっちにも特別な服はあるのだ。


「フユってドレスなんかも似合いそうよね」


「そうか?アタシにドレスは似合わないだろ」


「そんな事はないと思うわよ?なら試しに着てみる?」


「今はこれを脱ぐのも面倒だからまた別の機会にな」


「なら適当に見繕っておくわね」


オルライトにとってはドレスが特別な日に着る服である。

冬夕にもドレスが似合うと言っているが、実際はどうなのか。


そこはよく分からないので、今度着せてもらう事になった。


「フユの世界は年明け、新年のイベントがあるって事なんでしょ」


「まあな、でも行くかどうかは本人が決める事だよ」


「みんながみんな参加するっていうわけでもないのね」


「でも新年の運試しとか、そういうのも面白いとは思うけどな」


「運試しってなんなのかしら、ちょっと気になるわ」


新年の運試しと言えばやはりおみくじである。

尤も運試しでしかないので、本当になるという保証もない。


あくまでもいい運勢が出たらいいな程度のものではある。


「それでその運試しってなんなのかしら」


「おみくじってやつだよ、いい運勢が出たらいいって感じのやつだな」


「ふーん、こっちにも運試し的なものはあるわよ」


「文化は違ってもそういうのはあるんだな」


「ええ、こっちだと幸運のケーキって呼ばれるものが運試しなのよ」


オルライトが言う幸運のケーキ。

それはホールケーキの中に入っている指輪が当たると幸運になれるというもの。


ホールケーキを切り分けて生地の中にある指輪が当たると幸運になれるらしい。


「運試しっていうのは異世界になってもあるものなのね、面白いわ」


「そこは異世界になっても人は幸運を求めるからなのかもな」


「確かに世の中には凄い幸運体質な人っているものね」


「そうなんだよな、幸運体質も不幸体質も世の中にはいるもんなんだよ」


「運を引き寄せたいっていうのはみんな思うのかしらね」


異世界でも運試しは存在する。

それは人は誰しも幸運を引き寄せたいからなのか。


形こそ違えど運試しの文化はあるという事なのだろう。


「それにしても新鮮なフユが見られてよかったわ」


「あまり言うな、どうせ新年が過ぎるのはあっという間だし」


「晴れ着、素敵な服よね」


そんな特別な日に着る服の話は異世界でもあるという事。

ドレスはそうした特別な日に着用する勝負服的なものなのかもしれない。


だからこそオルライトも和服には興味を示す。


異世界だとしても似ている文化はあるという事なのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ