使われている素材
三年目に突入し様々な事が本格的に動き始めた。
それに伴いオルライトや村の産業も積極的に動き始めた。
オルライトが婚約を断る条件をなんとしても四年目までに達成する気らしい。
住民の数も納税額も順調に積み上がっているため、ここでブーストをかけるらしい。
「フユ殿、少しよろしいですか」
「あんたは確か服飾とかやってるとこの社長だったか」
「ええ、フユ殿の着ている服などに興味があるので」
ヴィクトリエルも冬夕の着ている服などを再現しているのは地味に凄い。
そんな中興味を示したのはまた別のもののようで。
「財布などを見せていただきたいのですが」
「財布?カツアゲじゃないよな」
「いえ、財布に使われている素材などに興味があるのですよ」
「素材ねぇ、まあ見るなら見てもいいけど、中身は盗るなよ」
「はい、感謝します」
ディミトリアスが興味を示したのは財布に使われている素材など。
冬夕の使っている財布は進学祝いに親から贈り物としてもらったもの。
そこそこいいお値段がするが、高すぎるという事はないようだ。
「ふむ、これは何を使っているんですか」
「アタシはそこまで詳しくないけど、牛革だと思うぜ」
「牛革、牛の革という事でよろしいですか?」
「ああ、だと思う」
「牛の革、なるほど、そういうもので作る財布もあるんですね」
ディミトリアスも牛革という素材には興味を示している様子。
こちらの世界にも革製品はあるが、牛革は聞かないという。
冬夕も靴なんかも革製品であるため、異世界の革製品に興味を示した様子。
「しかしツヤなどが素晴らしいですね」
「そういう風に作られてるからだろ、アタシの世界だとこういうのは珍しくないし」
「このツヤはしっかりと磨いた、手入れをしたからこそ出来たものなんでしょうか」
「新しい商品とか見てると、アタシの世界のもんも意外と再現出来るんだな」
「そうですね、フユ殿の学生服なんかも全く同じではなくとも再現しましたから」
ヴィクトリエルの技術は何気に高いという事を窺わせる。
冬夕の来ていた学生服などを全く同じではないものの再現してしまうその技術。
それを売り込んでいるのもまた大したものだ。
「ありがとうございます」
「ああ、何か参考にでもなったか」
「まあ一応は、いい商品が作れそうですよ」
「そりゃどうも、にしてもやっぱいい服を扱ってるんだな」
「貴族向けのブランドと平民府向けのブランドがありますからね」
ヴィクトリエルは貴族向けと平民向けの二つのブランドを展開している。
それは平民にもそれなりにいい服を提供したいからという事かららしい。
とはいえ値段もそこそこするものではあるが。
「そういえばフユ殿の財布は厚みなどがありますが、何をそんなに入れているんですか?」
「基本的には紙幣と硬貨、あとはポイントカードとか交通カードとかだよ」
「ポイントカードというのはなんなんですか」
「買い物をするとポイントが付いて、それが金の代わりに使えるっていうシステムだよ」
「ふむ、ポイント、そのポイントがお金の代わりになるですか」
ポイントカードにも様々ある。
ポイントが全部溜まると一定金額の買い物券になるタイプ。
その一方で1ポイントが1円になるようなタイプだ。
「ふむ、ポイントカードというのも面白いですね」
「真似でもする気か?」
「そうですね、出来るならやってみるのも面白いかもしれません」
「ポイントカードって頻繁に利用する店の方が向いてると思うんだけどな」
「それでも興味深いシステムだと思いますよ」
ポイントカードにも興味を示してきたディミトリアス。
とはいえ真似するのはなかなかに難しいようだ。
やるとしたらポイント満タンになったら買い物券になるタイプだろうか。
「ポイントカードはスタンプが溜まると一定金額の買い物券になるタイプもあるんですか」
「ああ、あるな、ポイントの台紙にスタンプを買い物毎に押して全部溜まるとってやつ」
「ふむ、フユ殿の世界では大体いくらぐらいになるのが相場なんですか」
「店にもよるけど、500円から1000円ぐらいかなと思うぜ」
「なるほど、こっちの金額換算で銀貨一枚程度が相場ですか」
その辺は上手く調整していくという事になるのかもしれない。
とはいえポイントカードは服屋よりは薬屋や雑貨屋の方が向いている気がしなくもない。
なのでそこは他の店とも相談になるのか。
「とりあえずいろいろありがとうございます」
「ああ、まあ何をやるにしても無理はするなよ」
「はい、面白いものは何事も挑戦ですね」
こっちの世界でもポイントカードが始まるかもしれない。
ただどちらかといえばスタンプカードの方が向いている気はする。
スタンプカードにしろポイントカードにしろやってみるのは大切だ。
もしかしたら面白い事になるかもしれない。




