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三年目の始まり

オルライトが村の領主代行となってからいよいよ三年目に入る。

三年目は目標である住民の数か納税額をクリアするために動く事になる。

オルライトが村に来た元々の理由が婚約破棄のための約束でもある。

今の住民の数と納税額はどちらも半分以上はすでに達成済みだ。


「さて、気合い入れていきましょうか」


「オルライト様が三年目まで来るとは思いませんでしたね」


「キスカ、一言多いわよ」


そんな三年目の始まりだが、これといって変わった事は特にない。


そんな三年目初日もまずは村の様子を見に行く事に。


「あら、バルカ、村の方は特に変わりはないかしら」


「ええ、特に問題ないですよ、しかしこの三年間で村も様変わりしたもんですね」


「そうね、国からの開発計画については聞いていたんでしょう」


「ええ、説明会もきちんと参加して聞いてましたよ」


「それにしても村人はもっと反対するものだと思ってたけど」


オルライトもそこは意外に感じていたらしい。

普通は開発計画は地元民はもっと反発すると思っていた。


しかし意外とすんなり受け入れられている辺り、仕事がなくならなければいいという事か。


「村人達は反対とかはしなかったのかしら」


「反対する人もいましたが、少なかったですね、便利になるなら全然歓迎だと」


「なるほど、こんな海沿いの村でも便利になって仕事がなくならなければ構わないと」


「ええ、雇用が増えるのなら開発は全然してくれて構わないっていう事です」


「だから私もすんなりと受け入れられたのね、やっと腑に落ちたわ」


バルカ曰くこの村の住民は貴族への悪いイメージはほぼ持っていないという。

それは前の領主様も村人とは親しくしていたというのが大きいのだろう。


そんな事もあり、村人は貴族がきちんと国やこの村のために貢献したのを知っているとも。


「でも開発計画とはいえ村をいろいろいじってもよかったのね」


「村の人達も昔は賑わってた事を知ってますからね」


「とはいえ住民が増える事も意外と悪く思っていないのね」


「まあ開発計画には住民の数を増やす事も含まれてますし、こんな土地ですしね」


「こんな国の端っこにはそもそも進んで移住したい人は物好きって考えなのかしら」


ここは国の中でも北側にある領地、国の中では北東にある場所だ。

国の中の北の領地であるローゼンブルク領の小領地である。


なので国の領内では割と端っこの方という事にはなるのだが。


「村人達は器が大きいというかおおらかというか」


「村人達もここが好きなんですよ、だからここをたくさんの人に好きになって欲しいんです」


「この村への愛は本物って事なのね」


「ええ、自分も村で育ってきた身なので、村は好きですし、発展するのも歓迎ですよ」


「バルカは大人なのねぇ、その若さで落ち着きすぎというかなんというか」


オルライトも年齢の割には活発で豪放磊落な性格ではある。

しかしここの村人達は貴族がきちんと仕事をしていると知っている。


それは前の領主様が貴族への偏見を取っ払ってくれたという事なのかもしれない。


「まあそういう事なら、これからもいろいろやらせてもらうわね」


「ええ、確か国が定める定義では街というのは住人が10000人以上でしたっけ」


「そうよ、私がお父様から出された条件がその10000人以上だもの」


「つまりオルライトさんの婚約破棄には村を街まで発展させろって事ですか」


「そうなんでしょうね、開発計画にも移住者を募れって書いてあったし」


村から街になるには住人を10000人以上にする事。

それは居住している人数という事でもある。


住んでいるという実態が確認出来る人数が10000人以上という事なのだ。


「村の話はもっと聞いておいた方がいいかもしれないわね」


「まあ村人のほとんどは開発計画には賛成ですよ、それは確かです」


「なるほどね、なら安心ではあるかしら」


「反対の人も前の領主様の事は知っていますしね」


「反対の人は少ないから、抗議にも来ないって事なのかしら」


開発計画への反対の立場の人も当然村にはいる。

だが数は少ないので、わざわざ抗議に来る事もない。


それは本人達も分かっているのだろう。


「とりあえず話を聞かせてくれてありがとうね」


「別に構いませんよ、三年目も期待してますよ」


「ええ、期待してなさいよ」


そうして三年目が始まったわけである。

ここからが本番であり、移住者を増やし納税額も一気に増やしていく。


村が街になる頃にはオルライトの婚約は解消されるだろう。


つまり条件の一つは村を街にまで発展させろという事である。

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