海側からの相談
エルフとダークエルフとの交渉を終えたオルライト。
そのまま村に帰還し、その間に発展は多少ではあるが進んだ様子。
続いて取り掛かるのは新たな工房や鍛冶屋などの新設。
また薬や服飾などもなんとか出来ないかと考える。
「ねえ、薬とか服飾に優れる人って知らない?」
「薬とか服飾?そうだなぁ、薬は研究機関から引き抜いて服飾は貴族かなぁ」
「なるほど、だとしたらベル、研究機関から薬に詳しい人を30人引き抜いてきてくれる」
オルライトからベルへのまた新たなる無茶振り。
薬に関係する研究者を30人引き抜いてこいというものだ。
「出来るかしら」
「出来なくはないけど、作れる施設と売るためのお店がないと始まらないよね?」
「そうね、そっちはもう少し土地が広がったら建てさせるわ」
「分かった、建築を依頼して完成する目処が立った頃に出向いてスカウトしてみるよ」
「ええ、ありがとう」
とりあえず薬関係は薬を作って売るための薬屋を建てるのが先になりそうだ。
その完成の目処が立った頃にベルが研究機関に出向きスカウトしてきてくれるという。
その一方で服飾はどうするかというと。
「服飾だと装飾品も同じお店で売る事になるだろうけど、装飾品はいい職人とかいないかしら」
「装飾品ならドワーフがいいと思うよ、女性のドワーフは手先が器用だからね」
「女性のドワーフね、それなら鍛冶職人をスカウトに行くついでにそっちも交渉しましょう」
「とりあえず箱は先に建てておいていいと思うよ、人が来ればすぐに動かせるからね」
「そうね、なら広がった土地に箱だけ先に建てさせるわ」
ベル曰く人が来ればすぐ動けるように箱は先に用意しておくといいとのこと。
その上で次の交渉はドワーフのところに行く事を決める。
その一方で服飾にキモである衣服などを誰に頼るかを考える。
「ねえ、服飾の柱になる衣服とかは誰かいい人を知らないかしら」
「うーん、大きいところは流石に厳しいだろうからヴィクトリエルはどうかな」
「ヴィクトリエルって確か新興の服飾ブランドよね?」
「うん、興してからまだ一年経ってない完全な新興ブランドだね」
「売名にもなるし、宣伝にもなる、相手としても悪い話ではないかしらね」
新興の服飾ブランドのヴィクトリエル。
ベルはそこなら話に乗ってくれるのではないかと考える。
売名と宣伝になるという事を考えれば、将来のスポンサーにもなるかもしれない。
「とりあえずそれで計画を組み立てておくわね」
「うん、話は僕が通しておくからそっちは話が出来る日を作っておいてくれ」
「了解よ、それじゃ私は村の人に話をしに行くから」
「分かった、近いうちに研究機関とヴィクトリエルに話をしに行くよ」
「頼むわね、それじゃ」
ベルも箱の建設が始まったぐらいのタイミングで人のスカウトに行ってくれることに。
ヴィクトリエルの関係者と会える時間と日をオルライトも作る事に。
ヴィクトリエルの関係者に会える日は話が通ってから改めて折り返す事にした。
「ん?バルカ、何かあったの」
「ああ、オルライトさん、実は海側の住民からの相談が来てまして」
「海側の人?一応聞かせてもらっていい」
「実は漁で捕れる魚に市場や流通に出回らない魚がかかるので、なんとか出来ないかと」
「市場や流通に出回らない魚ねぇ、食べても美味しくないとか?」
バルカが言うにはその魚は普通に食べられるが、市場や流通は出せないものだという。
要するに市場価値が全くないような魚であり、地元民でもあまり食べないのだとか。
ただ食べる事は普通に出来るし、決して不味いという事でもないのだとか。
「うーん…料理に関しては私はそんなに詳しくないのよね」
「魚に詳しい料理人は港側にはいますが、地元民ですしねぇ」
「それなら別の海沿いの街や村の情報とかが欲しいところね」
「その土地の料理とかが分かれば使い道も考えられるというわけですね」
「ええ、この相談はすぐに返事は出来ないけど必ずなんとかするからそう伝えておいて」
オルライトはこの話は海沿いの村であるヴァッシェングロースの産業に繋げられると考える。
ただ不味くはなく普通に食べられて市場価値のない魚をどう扱うか。
料理には詳しくないが、要するに食べられるようにする、価値を創出すればいいという事だ。
「とりあえずその魚を今度いくつか持ってきて、試食してみるから」
「分かりました、そう伝えておきます」
「不味くはない、普通に食べられる、でも市場価値はない…価値を作るしかないのかしらね」
オルライトが考える価値の創出。
それはその魚を市場に出せるようになんとかするという事。
元々市場に出回らずに地元でも食べる人は珍しいが、食べるには何も問題はない魚。
価値のないものに価値を持たせるという事に挑戦する事になる。




