ツリーハウスがないなら、おうちに集まりゃいいじゃんか!
おや、ギンちゃんのワルツが聞こえます。いつもより半音高いようですが、風邪でも引いたんでしょうか。だれか、サルスベリの木の上にぴかぴかのツリーハウスをこしらえてくれればいいんですがね。
さて、サルスベリの木の上に公共のツリーハウスがないために、あんなところに好んで登って降りられなくなって泣いてしまうのはギンちゃんくらいのものでして、我らがサラセニア火山隊長もあそこには登ったことがないそうです。登ったこともないくせに、「おうちでパーティのほうが、一・五七倍も楽しいわ」といつも言うのです。
ちょうど今夜、サラセニア火山隊長はホームパーティを開くというので、今からもうるんるんです。タピオカドリンクを頬張りながら、パッションフルーツの描かれたココナッツ製エプロンを身につけて、鼻歌を歌っています。
やがて、第一のお客がやってきました。第一のお客は、ナメコをたくさんつけた木の棒を担いだニンフ、その名も「なめこ娘」です。きのこ狩りに出かけた男性が三日間経っても帰らないときは十中八九なめこ娘にからめとられてニヤニヤしてると思え……といわれる、あのなめこ娘です。
「いらっしゃい」
「むふふ、今日はお鍋を持ってきたわ」
「まあうれしい」
ふたりはきゃっきゃと妖艶な声でさえずりながら、フグ鍋を食べました。
「ああ、お腹いっぱい。今日はありがとう」
なめこ娘はそう言って、山へ帰っていきました。
リー、リー……とベルが鳴り、第二第三のお客がモニターに映りました。サラセニア火山隊長がゲートまで迎えに出ると、表札の前には第四のお客まで並んでいました。
「たいへん、いっぺんに入れたら、床が抜けちゃうわ」
サラセニア火山隊長は羊皮紙でこしらえた整理券を配って、まずは第二のお客、レモンの妖精を自称する、その名も「しとろんろん」を招き入れました。
「……」
しとろんろんは黙って紙袋を差し出しました。
「まあ、ありがとう」
その中には、蜂蜜色の夕闇を象ったテンガロンハットが入っており、サラセニア火山隊長はたいそう喜びました。
しとろんろんは黙って顔を赤らめましたが、ふと、玄関に飾ってあったレモングラスが目に入ってしまい、豹変してしまいます。
「うごごーっ」
「あら、どうしたの?」
「ニーセモノっ」
「あらいけないっ」
サラセニア火山隊長は慌ててレモングラスを暖炉に投げ込んだのですが、時すでに遅し。
「ニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニセモノニーセモノーおおおっお!」
レモングラスへの嫉妬に我を忘れたしとろんろんは、大音声で泣き叫びながら、燃え盛る暖炉をぶっ壊して煙突から帰ってしまいました。
「あらまあ。こんどお詫びに、素敵なマフラーでもプレゼントしてあげなくっちゃ」
さて、サラセニア火山隊長はぶっ壊れてしまった暖炉を組み直してから、第三第四のお客を招き入れました。第三第四のお客は、フグマニアのぐーちゃんと炊飯器のアルベルトちゃんなんですが、彼らはとても礼儀正しくサラセニア火山隊長に会釈をして、五分ほどおしゃべりをして帰っていきました。
そんなこんなで、るんるん気分のホームパーティは終わり、サラセニア火山隊長は満足して、サスペンス映画を三本見てから眠りについたのでした。
みなさんも、よい夜を。




