k-70
昼過ぎ、飯を食っていたら、あのアホ貴族が冒険者を20人ほど連れてやってきた。またかよ……。また、偉そうに馬の上で踏ん反り返っていらっしゃる。
幸いなことにジュノとマルゴはいなかった。ほっとする俺。
「○×▲◆~~▽! 」
何か言っているが、なんとなく意味はわかる。しかし俺は学んだのだ。
俺は申し訳なさそうな表情を作り、ランカスタ語でゴメンナサイと言いながら土下座した後、再度ゴメンナサイと言いながら金貨5枚を懐から出した。
アホ貴族がちょっと不服そうな顔をしたので、もう5枚追加で出した。
とたんに上機嫌になった様子のアホ貴族。同じ手に引っかかるのかい! と心の中で突っ込んだ。アホ貴族は冒険者達を連れて、森の方へ立ち去って行ったのだった。
アッシュを抱っこしながら、彼らを見送っている俺の頭の中では、なぜか『あ〜る〜はれた〜ひ〜る〜さがり〜』とドナドナのメロディが無限リピートで再生されていた。
アッシュが何かを察したのかもの悲しげに「クーン」と鳴いていた。
南無阿弥陀仏。せめて生きて帰ってきてくれ。
…
……
アホらし。
どうでも良くなった俺は、昼食の残りを食い始めたのだった。




