k-523
「神獣合身!!」
俺はシルベストさんの体に触れ、彼のアドバイスに従いそう唱えてみた。するとシルベストさんの体が青白く発光し霊体のような姿となり俺の体にまとわりついた。直後俺の心臓がドクンドクンと脈打ち、体中が熱くなる。頭や体の節々が痛くなり目を閉じる。
しばらくして目を開けると、俺の視点がかなり高くなっていた。なぜかサラサやエルザ女性陣たちが両手で目を覆っていて、ユリナさんが「見ちゃダメー!」と叫びながら俺の目の前で両手を広げている。何があった?
ターニャの俺の足元で「ほわわー」と言いながら何かを凝視していたのだが、ユリナさんにめっちゃ怒られていた。
「なんだ?? うおっ」
自分の体を見下ろしてみると、二回りくらいムキムキに隆起した足腰胴体の筋肉が俺の服とズボンを吹き飛ばしていた。髪も銀色っぽくなっており、耳と尻尾、両手両足に鋭い爪が生えていた。つまりすっぽんぽんである。
俺は両手で極部を隠しつつ自分を鑑定してみる。おお! ステータスがアベレージ15000ほどになってる。特に力と素早さの伸びがすごい。
「次は小娘の番だ。我がサポートしてやるからやってみるがよい」
俺の体を乗っ取ったらしきシルベストさんが、足元でユリナさんに両手で目隠しをされたターニャに声をかける。
「うん! あたしもやってみる!!」
アッシュを抱っこしたターニャが「神獣合身!」と叫ぶと、アッシュの体が青白く発光し霊体っぽい姿になりターニャにまとわりついた。しばらくすると、小学生くらいの子供の体型だったターニャが、みるみる成人サイズのお色気たっぷりナイスバディーに変身。
着ていた子供服がボロ切れのように吹っ飛んでしまった。目の毒すぎるのと背徳感から、思わず目を逸らす俺。
しかしどうやら目を逸らしたのは俺だけだったようで、色気に目がない男どもは本能には抗えずターニャを凝視。
「うおおおおー!!」と歓喜の怒号が会議場を埋め尽くす。
だがそんな不埒な野郎どもをのさばらせるほど、世の中甘くはできていない。
マルゴとジュノはターニャの裸を見て両目がボイーンの形になった直後、隣にいたサラサとエルザにチョキ目潰しを喰らっており、絨毯の上で「ぐおおおお!」と雄叫びをあげながら転げ回っている。
俺にもそれと同時にユリナさんのチョキ目潰しが飛んできたのだが、身体能力が驚異的にアップしたおかげで余裕でかわすことはできたのだけど、そこはあえて瞬時に頭の位置を3センチほど下げ、まゆ毛のところで顔面ブロック。そして眼球に大ダメージを負ったふりをして、マルゴたちと一緒に雄叫びをあげて転がりつつ周りの様子を伺うことにする。
完全回避してしまうと「なんで避けたの!!」と怒りに火を注ぐことになるので、夫婦関係を円満に保つためにはこういう演技も必要なのだ。
絶賛ブチギレ中のユリナさん、サラサ、エルザ、ココリさん、ミズチさんたち女性陣は鬼の形相のまま、剥き出しになったターニャのナイスバディを会議室にあった白のテーブルクロスでくるみ、まわりに睨みをきかせる。
男どもはまさに蛇に睨まれたカエル状態、真っ青に。
チョキ目潰しによる眼球ダメージからどうにか復活したマルゴ、ジュノの二人に加え俺も、鬼のツノを生やしたユリナさん、サラサ、エルザの前で土下座をし謝るハメになったのだった。
俺悪くないよー、と言っても火に油なので、とりあえずごめんなさいと連呼するしかなかった。
この世の不条理を俳句にしたいところだが、女性陣がそんな暇を与えてくれるはずもなく。夫婦関係の危機を脱すべく俺たちはひたすら謝った。
遠くからテーブルクロスにくるまり大人たちによる痴情のもつれ劇場を眺めていたのは、精神年齢が未だお子ちゃまのターニャ。
見た目だけは絶世の美女となったターニャは、アッシュと一緒に顔にクエスチョンマークを浮かべつつ、退屈そうに首を傾げるばかりだった。




