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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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 それから俺たちは今後のことを話し合った。


 デルムンドによると、知恵の間からはさらに10数基のポータルが発掘された。加えて古代文字の解読ができずにどこと繋がっているか飛んでみないとわからいポータルの存在、数は限られるが任意のポータルを指定して飛ぶことができるポータルコンソールと呼ばれる指輪型のデバイス(通信機能つき)。さらには、魔導機関動力エンジンを利用した汽車とレール、食料培養器など。高精度の人物鑑定水晶なんてのも見つかった。


 他にも用途が解明されていないだけで、目下研究員たちが研究に勤しんでいるとのことだった。


 これを踏まえて、こちらの勢力の経済圏をどのように構築するか、という話し合いをした。ポータルで自国他国との主要都市をつなぎ、魔導機関列車で輸送網を構築する。食料を得ることが困難な気候の地域にはポータル駅に食料培養器を設置して食料支援をし、利用者増につなげる案が出された。



 それに伴って、案を実行するために組織改変をすることにした。


 今回のパニックワームの襲撃で対応が後手後手になったことを受けて、軍部を再編。軍部の中に諜報部を新たに設置することにした。軍参謀長はホワイトさん、軍団長はジュノ、その指揮下に諜報部があるわけだが諜報部長はホワイトさんのパーティメンバーで斥候職だったココリさんにお願いした。そして二重スパイを買って出てくれたシーナさんと妹のニナさんには諜報部隊のメンバーとしてココリさんの下に就いてもらうことにした。


 諜報部隊員には地下遺跡で発掘した高性能鑑定水晶をもたせ、街の出入り口や、街中でも怪しい人物を発見した場合は鑑定して安全を確かめる、という活動をさせることにした。鑑定水晶には国籍、人種、カルマ値(悪意をもつかどうかの判断指標となる)、レベル、スキルが表示されるので、トラキアの国籍だったり不穏なスキルがある場合には軍と連携して取り調べる、結果黒と判断されれば警備兵と連携して、不審者を入国禁止処置とするなどの対応をとることとした。


 その他の軍の内部も再編、騎兵剣士部隊(隊長ファイターのヒジン)、重装タンク部隊(隊長タンクのゴッズ)、ヒーラー魔法士部隊(隊長医者のキシュウ先生、副隊長ヒーターのミズチさん)、遠距離物理攻撃部隊(隊長ユリナさん)、補給部隊(隊長エルザ)に再編し、ヴォルフスザーン城の中に各部隊の部屋を割り当てた。



 経済圏を作る案を実行するために、財務や商売のお金周りの部署も再編することにした。


 新たに、ポータル駅建設事業部(部長アイリス)、魔導機関列車事業部(部長アイリスパパのディーンさん)、多国間交易事業部(部長サラサパパのアランさん)、地下遺跡テクノロジー研究部(部長デルムンド氏)を創設。



 ついでなので、今までは軍部が割と柔軟に対応していた領内の争いごとだが、それらを解決する裁判所の長官を文人のサラサ、副長官を軍人のジュノ、ホワイトさん3人の文人軍人を合わせた合議制で組織することにした。


 各所の簡易裁判所に彼らの部下を配置して解決、要件をみたした重たい案件だけ城にある裁判所に上告できる二審制で運用することにした。基本ほとんど全ての案件は簡易裁判所で処理されることになるのでサラサたちには、そんなに負担はないと想定。ただ本当に重大な案件があった場合に現場で対応するに厳しいだろうということで、このような運用にしてみた。


 これらの文人系部署の部屋もヴォルフスザーン城内に設置し、部署員はそれぞれの商会の部下や、知識人である地下遺跡研究員から抜擢することにした。


 同じ城の中に中枢となる部署があれば連携が取りやすいだろうし、堅牢な城の中に国の頭脳を置いておけば、もし敵に攻められたときでも機能不全になりにくいだろう。


 だいたいこんなところかな。



 お前は何もしないのかって? いやむしろ領主の俺は暇なほうがいいんだ。君臨すれども統治せずってやつだ。


 サボってんじゃねえぞ! という声が聞こえてきそうだけど、そうではない。これは本当にその方がいいのだ。


 俺が会社員時代聞いた言葉にこういうものがある。


「社長が忙しく働きだしたら、そこはそろそろ潰れるから気をつけろ」というものだ。


 資金繰りが火の車なのか、社員に辞められてしまい社長が働かないと仕事がまわらないのか。いずれにしても、会社が危機的状況にあることの現れである可能性が高い状態。それが組織のトップが死ぬほど忙しいという状態だ。


 だから領のトップである領主の俺は、仕事が回るシステムを作り上げた後は、むしろ暇なくらいでいい。そうしておけば、いざ何かがあった時に迅速に動けるのだ。



 ということで、決めるべきことを全て決めたことで会議はお開きとなったが、会議に参加した全員部屋を出ることはなかった。


 なぜならば、今ここでシルベストさんによる、契約主の力をさらに引き出すフェンリルの秘技「神獣合身」を実演するという話になっていたからだ。


 神獣の秘技を一目みたい面々は、期待に満ちた目でシルベストさんに注目した。

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