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ベッドから起きて窓を開けると、かなり高い位置から太陽の光が降り注いでいた。昨日はかなり深酒をしてしまったようで、喉がカスカスだ。久々にムレーヌ解毒草のスープを作って飲もう。
アッシュはすでに起きていて、空になった自分のお皿を俺の足元に置いて不満げに鼻を鳴らしているので水とエサをやる。
それにしても一晩一人でまったりゆったり過ごせたおかげで思考がだいぶんクリアになった。
昨日俺が考えた今後取るべき行動は次のとおりだ。
まず第一に強くなることだろう。それも聖教国で戦ったギデオンや配下の魔人たちを倒せるくらいの強さに。
アッシュの父で先代フェンリルのシルベストさんから、どうすればギデオンとまともに戦えるのか、強くなる方法を教えてもらう。ジュノを生き返らせることに必死で後回しになっていたけど、これからは生き残るためにもっと強くならないといけない。
次に、ラフィットを油断させることが必要だろう。具体的には俺や部下たちが麻薬パープルヘイズ中毒になっているとの誤情報をラフィット側に流し信じさせるのが良い。それには二重スパイになってくれたシーナさんに協力してもらい、こちらの商人を同行させてパープルヘイズを買い付けると同時にサクラを用意して「ケイゴオクダとその仲間たちはパープルヘイズ中毒になっている」とそこかしこで言ってまわる。
こっちを舐めてくれれば、先日のようにパニックワームをけしかけるみたいな攻撃頻度も下がるだろう。なぜならこっちが麻薬で自滅してくれるなら、わざわざ向こうも戦力を裂いてまで仕掛けるメリットがないからだ。
第三に、密かに地下遺跡のポータルなどの技術を駆使して経済圏を作ることが必要だ。そしてラフィットとその作り上げた俺たちの経済圏とを分断させることだ。こちらには麻薬中毒を回復させる手段があるので、パープルヘイズが原因で紛争になっている地域の支配層を治療し、こちら側の経済圏に取り込むといい。
そして中毒から回復した紛争地域の支配層にも、俺たちと同じくパープルヘイズの虜になったままであるという誤情報をラフィットに流し続けてもらう。そして紛争をしているふりをしてもらう。彼らとしてもラフィットにいいように操られていたわけで、麻薬依存症の治療で恩を売っておけば協力してもらえると思う。
大まかなのはこんなところかな。まだまだ帰ってサラサやジュノたちと詰める必要があると思うけど。
それから俺はムレーヌ解毒草のスープを飲んで二日酔いを治してから、小屋を後にすることにした。
小屋から出ると、畑仕事をしていたジョバンニ老夫婦は俺の後ろからトコトコついてくるアッシュに気づくと「きゃわいいね〜」と相合を崩し、ひとしきりアッシュを両手で撫で回していた。アッシュはどこに行ったって人気者だ。ただ4本足で立っているだけで老若男女問わず好かれるアッシュ。できれば俺もアッシュに生まれたかった。
ジョバンニ老夫婦にお礼を言って、俺はイトシノユリナに戻ったのだった。




