k-503
会議室に入ってきたのは、イトシノユリナでキシュウ先生の治療を受けつつ、療養を兼ねてイトシノユリナでゆっくりしていたシーナさんだった。
シーナさんはホワイトさんが描いた黒板の紋様を見てハッとした表情になり、それから唇を引き結んだ彼女は、「本当にごめんなさい!」と深々と頭を下げた。
混乱する俺たちをよそに悟ったような顔のホワイトさん。
シーナさんは「全てお話します。本当にごめんなさい!」と再び謝罪。
それからは名探偵ホワイトさんによるシーナさんを問い詰めるという謎解きショーが始まった。
曰く、「この木片(アッシュが拾ってきたの)にモンスターを封じ込めて、街中で解放したのですね?」とか、「この出現場所にはある一定のパターンがあり、これには儀式的な意味がありますね?」とか、「さて、今回の犯人ですが私が思うに……」とか、他にも色々。
その全てに「はい……」と答えるシーナさん。ってかシーナさん「はい」しか言ってないじゃん。
だがそんな言葉のキャッチボールの中に、看過できない情報があったような。それは「儀式」という言葉だ。今回の事件がモンスターを使ったテロであることを考えると、なんだか嫌な予感がするんだけど。
「ちょっと待ってください。儀式ってなんのことですか?」
自信満々で謎解きショーを披露していたホワイトさんに水を差す形になってしまったが、ちんたらやってられない状況に結論を急がせることにした。
話の腰を折られ、眉毛を不機嫌そうに動かすホワイトさんは「今から言おうと思ったのに……」とぼやく。
「お願いだから教えてください!」と頼み込む俺にようやく機嫌を直したのか、「見たまえ! ここが次の出現ポイントである!!」と黒板を指さして宣言したのだった。
「それはつまり……?」
「ここにパニックワームが出現したとき召喚魔法陣は完成し、最終進化系超巨大モンスター、パニックヒュドラワームが出現するのだっ!!」
「「「え……」」」
凍りつく空気。ドヤ顔決めポーズのホワイトさん。
会議場にはシーナさんのシクシクという嗚咽の音だけが響く。ようやくフリーズ状態から脱した俺は。
「えっと、それってつまり召喚魔術とやらが完成してしまった場合、パニックワームの親玉的なのが出てくるってことですか?」
「もちろんだとも!!」
「自信満々に胸を張らないでください!!」
というか悠長に会議なんかしてる場合じゃない。
我に返った俺たちはとにかく次の召喚ポイントとされる場所に行ってみようということになった。
慌ただしくなる事件対策本部。
「みんなちょっとまて……。何か聞こえないか?」
兵士の誰かがポツリと妙に響く声でつぶやいた。それから全員で耳をすませてみると。
ズーン……ズーン……パラパラ……
鈍く重たい地鳴りのような音が、どこからともなく遠くの方から聞こえていた。




