k-497
何やら町の方が騒がしい。
いつもは静かな朝、町の方から聞こえる悲鳴や怒号の音で目が覚めた。何事かと秘書兼メイドのメアリーさんに問いただすも、彼女も混乱している様子。
俺は寝起きの姿そのままに、壁に立てかけてあった絶剣デルムンドを掴むと、ロシナンテ(馬)に飛び乗り、悲鳴が聞こえた方に駆けだしのだった。
俺は自分の目を疑った。
街中にトラキアの砂漠で遭遇したピンク色のクソデカいミミズのようなモンスター、パニックワームが、目で見える範囲だけでも複数体暴れていた。
パニックブレスにやられた民衆や冒険者が錯乱して暴れ出し、大混乱状態。急な襲撃に領兵たちも混乱している様子で、後手後手に回っていた。
パニックワームが何かをベッ! と地面に何かを吐き出した。それは胃液まみれでドロドロに溶けた丸呑みされた馬だった。それを見たロシナンテ(馬)が恐怖に目をひん剥いてブヒヒン! と鳴いた。
ロシナンテ(馬)の鬣を撫でつけ落ち着かせると、俺はテイムホテルからパニックワームの表皮製マスクを取り出して装着。(マスクはブレスに対する耐性が上がるのだ)
絶剣デルムンドから7本の浮遊剣を出現させると、今にも丸呑みされそうになっている町娘の前に剣を滑り込ませた。
パニックワームが剣に気を取られている隙に、かろうじて腰を抜かした町娘を救出できた。
町娘にパニックワームのマスクを一枚渡し、戸の開いた家の中に隠れさせることにした。
「その前に、マペット、ツッチー、ビードラ。遠距離攻撃であいつらから町人を守れ」
俺はテイムモンスター3体を召喚したのだった。
なお、シルベストさんは神樹様のところ、アッシュはターニャと一緒に家にいるのですぐには呼び出せなかった。アッシュとターニャはメアリーさんから事情を聞くと思うので、追っつけやってくるだろう。
俺が恐怖に震える町娘を非難させていると、そこへ警備の領兵が近寄ってきた。今ここに指揮官はいないとのことだったので、臨時で俺が現場指揮をすることにした。
俺はありったけの10枚ほどあったパニックワームのマスクを取り出すと、兵士に渡し、配るように言った。
そして、サラサの商館の倉庫にもっと在庫があるはずなので、誰かにとりにいかせ、ありったけの在庫を配るように指示した。
目で見える範囲だけでも4~5人は錯乱して暴れている。
どうやって事態を収拾しようかと、俺は頭を悩ませるのだった。




