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レスタに到着した俺は、バイエルン様を訪ねた。町の人を驚かせないようにビードラはレスタ南門の手前で待機させておいた。
バイエルン邸ではドニーさんを始め、南門の戦いを一緒に潜り抜けた兵士たちから熱烈な歓迎を受けた。前は言葉など殆どわからなかったけど、今は普通に話せる。仕事そっちのけで「一緒に飲むぞ!」と言われたけど「ごめん、バイエルン様に用事があるんだ」と言って断ったら残念な顔をしてくれた。俺は「また今度時間作るから!」と言って彼らと別れた。
意思疎通できるって、なんかいいもんだな。それからも俺は街行く人たちから声をかけられた。
バイエルン邸に到着すると、バイエルン様は俺のことは信用してくれているようで、瞬間移動装置のことは条件つきだが快諾してくれた。「自分の領地内に設置するように。ただし監視はつける」とのこと。
また通行料を決め、そこから得た利益は駅の維持管理費用にあてること。それ以上の上がりは折半することにした。
むしろ交易が活発になってレスタが豊かになるとバイエルン様は喜んでいたよ。
ちなみに「自分の領地内」というのは、貴族が他の貴族の町に邸宅を土地家屋を持つ場合、そこは所有する貴族の領地という王国法上の扱いとなる。なのでレスタ内にある俺が土地建物を所有している雑貨店、孤児院、当初住んでいたレスタ南にある小屋は俺の領地ということになる。
こうなるとどこに設置するか迷うところ。
瞬間移動装置が悪用された場合、バイエルン様やレスタのみんなに迷惑がかかってしまう。
街中は確かに便利だけど、せっかく町の外に頑丈な塀囲まれた場所があるのだから、もともと俺がこの異世界に飛ばされたときに住んでいたレスタ南の小屋に隣接する形でポータル用の駅を拡張して設置することにした。
瞬間移動装置のある場所を便宜的に駅と呼ぶことにし駅の管理はレスタ兵士団とヴォルフスザーン兵士団の共同で行うことになった。何かあったときにどちらか一方の責任にしないためだ。
なお、元々マルゴに石塀で囲ってもらっていた俺の住んでいた小屋は、たまに俺が一人になりたい時用のスペースとして、サラサ商会のジョバンニ老使用人夫妻に引き続き管理してもらっている。彼らの居住用の家は石塀を拡張して新たに建てた。(人の出入りが騒がしい駅とは接していない)
ということで、さっそく駅の建設と人材配置に取り掛かることにした。
建築といえば雑貨店を設計してくれた建築士のテイラーさんだ。
テイラーさんにはとりあえず金貨1000枚を前金で渡して、駅用の建物と商業設備、倉庫、石塀の建築を依頼した。もちろんモンスターの襲撃もあるので石塀にはバリスタなどの設置もお願いした。
その足でジョセフィーヌママの店に寄り、ユリナさんの無事と駅のことを伝えると、ママは「今日は店じまいだよ!」と大号令。南の小屋から瞬間移動装置でイトシノユリナに帰る俺にくっついて、ユリナさんに会いに行くとのこと。せっかちなことだ。
ママたちと南の小屋で待ち合わせの約束をした俺は、孤児院と雑貨店、料理店を周り、久しぶりに従業員に会って南の小屋に駅ができることを伝えた。従業員には「うまいもんでも食ってくれ」と金貨一枚を渡し、孤児院の子供達にはテイムホテルに保管していたお菓子やユリナさんがデザインした子供服をプレゼントした。
そして孤児院の子供には一度遠足がてらイトシノユリナに招待することを約束したのだった。
最後にエルザとサラサの両親に挨拶。エルザとサラサの両親もジョセフィーヌママたちと同じく、すぐにでも身重の娘に会いたいとのことだったので、一緒にイトシノユリナに戻ることになった。
南の小屋にビードラに乗って向かうと、すでにママたちがいて「遅い」と文句を言われた。そんなママたちを宥めつつ、小屋を管理していたジョバンニさんに事情を説明。とりあえず、今日のところは石塀の中の農具小屋にポータルを置くことにした。
ジョバンニさんはサラサの部下で、その昔サラサ父のアランさんが若手の頃教育係を務めた経歴をもつ。つまり隠居した元凄腕商人だ。
隠居したということはスローライフを望んでいるということだと思うので、あまり無理させられないなと思っていたら、ここに駅と交易の拠点を作る聞くと「若い頃の血がたぎってきたわい!!」とやる気に。
鼻息を荒くして「がっぽり稼いでやりますわい!」と金歯を光らせていたし、管理だけでなく商売のことも任せても大丈夫そうだ。小屋の管理の合間に、露店でもやってもらおう。
農具小屋に瞬間移動装置を設置した俺は、試しに一度自分でイトシノユリナ側に飛んで問題ないことを確認。その後、ジョセフィーヌママ、お店のお姉さん方、サラサ、エルザの両親をイトシノユリナ側に転移させ、自分も帰還したのだった。




