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次に考えないといけないのはあの化け物じみたギデオンとあの魔人二人、さらにそいつらが率いている聖教国軍にどう対抗するかだ。今のところ動きはないが、いつまた攻めて来るかわからないし、どのような攻め方をしてくるかもわからない。
こちらも相応の対策を練っておく必要がある。
マペットによると、封印術で封じたギデオンと魔人二人は俺たちが逃げ出した後すぐに脱出してしまったとのこと。
あの時は犠牲を出してしまったが、あんな思いは二度としたくない。今出産のために入院している妻たちを未亡人にするわけにはいかない。
罠にハメられたことを反省し、二度と同じような手をくわないように何をするべきかを考えるんだ。考えて考えて考え抜く。それが大切な人たちを守ることにつながる。
そこで俺は軍のブレーンであるホワイトさんとジュノに意見を聞きながら、今後の作戦を考えることにした。
まず対ギデオン戦では、ターニャとアッシュが一番の鍵になる。現状では能力や武器の性能が不足しているのは明らかだ。砕け散ってしまった宝剣デルムンドでは刃が立たなかった。
勇者と神獣の強化が一番の課題だ。二人の訓練と神鉄オリハルコン製の武具を作れないか模索する必要がありそうだ。
この点についてはシルベストさんに二人のことを相談するべきだ。おそらく彼も神獣であるなら、かつてどこぞの英雄と肩を並べて強敵と戦っていたはずで、彼が生きているということはその強敵を打ち滅ぼし生き残ったということになる。
何気に俺もシルベストさんと契約をしターニャ並みのステータスになっている。勇者の称号こそ得られなかったけどそもそもどういう位置付けなのか、もっと強くなってギデオンと渡り合う方法はあるのかなど、ついでにシルベストさんに聞くべきだろう。
次に忘れてはならないのは、敵はギデオン個人ではないということ。ギデオンは国のトップであり軍を有している。つまり俺たちも領として勢力を拡大していかないと、現状の国力差を考えると数の暴力でつぶされてしまうだろう。
自分たちの軍を大きく強くすることはもちろん、協力してくれそうなところには協力を頼み、いざというときに力を貸してくれるようにしておかないといけない。
これまで精霊王エリューン様のメキア、バンデット王のガンドなど、いくつかの国と交流をもっている。もちろん俺が属しているランカスタ王国とも。
新しい同盟相手の獲得も含め、交渉をしていくべきだ。
そして最後に諜報戦、スパイ活動。
相手の動向を探るのは何より重要。いつどこをどのような作戦で攻めてくるのか、敵の戦力規模はどの程度か。情報一つが戦いの命運を握ることだってある。情報があればギデオンにハメられることもなかったと考えると、絶対に手を抜いてはいけないこと。
なのでこちらでも動かせる諜報員を敵国に潜り込ませる。
ホワイトさん、ジュノと一緒に天岩戸にある書斎に呼びつけ作戦を練っていると、扉が遠慮がちにノックされ、秘書のメアリーさんが入ってきた。
「トラキアのシーナ様がケイゴ様にお会いになりたいそうです。いかがいたしましょう」
今まさに諜報戦のことを考えていたところだ。
「会うよ。こちらにお通しして」
俺はトラキアの女諜報員、シーナさんに会うことにした。




