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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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「じゃあ、ホワイトさん、始めましょう」


 氷漬けになったジュノとジョニーの頭と口の部分、マペットの魔核を覆った氷の一部分をホワイトさんの補助を受けたターニャが解凍、露出させていく。


 体を氷で覆ったままなのは、術式の完了まで魂魄こんばくを散逸させないためだ。


 マペットだけは魔木素材や俺には理解不能な呪術的な供物を供えるという事前準備をしたが、ジュノとジョニーには口から霊薬を流し込むだけで他には特にすることがない。


 そして今回の復活の儀式はホワイトさんが行う。


 モンスターテイマーの間で「不死鳥の霊薬」は伝説級の蘇生アイテムとされているそうで、普通はもっと入手が容易な別の蘇生薬を使うらしい。ホワイトさんは「これで失敗したら、俺はもうモンスターテイマーを名乗れないよ」と笑いながら言った。


 それから俺とホワイトさんはジュノ、ジョニーの口から不死鳥の霊薬を注ぎ込み、マペットの魔核を【不死鳥の霊薬】にひたしていった。


 そして俺が最前列に並んでいたユリナさんの隣に下がると、ホワイトさんが祈祷に入った。


 …

 ……


 ホワイトさんの「キョエエエエエエ!」という恐山のイタコのような奇声が堂内に響き渡り、参列者が手を組んで祈りを捧げるという状態がしばらく続いた。


 だがジュノたちが目覚める様子はなかった。


 皆の期待が、不安と焦燥に変わっていくのが伝わってくる。


 ダメなのか?


 だが不意に、ホワイトさんの奇声に可愛い子供の声が混じった。


「パーパ、おっきよ!」

「こら、リン!」


 ジュノの娘リンちゃんは毎朝パパをそうやって起こしていたのだろう。ジュノの元にトテトテと駆け寄り、小さな手で顔をぺちぺち触った。


 祖母であるナティアさんがリンちゃんを抱き上げて、気まずそうに皆に謝ろうとしたその時。ジュノとジョニーの体から虹色の光が溢れ出した。そして光が収まる。


 ドクン


 大きな鼓動の音がしたような気がした。俺はジュノとジョニーの首に手を当て脈をとる。


 ドクン ドクン ドクン


 いや気のせいじゃない。同じく脈をとったキシュウ先生も頷く。


 ワンテンポ遅れて、今度はマペットの魔核から虹色の光が溢れ出した。パキパキと音を立てながら、魔核から魔木が芽生え、あっという間に元通りの形に復元されていった。


 「成功だ!!」と叫ぶホワイトさん。キシュウ先生が「早く体を暖めろ!」と声を上げる。全員がジュノたちに駆け寄る。


 礼拝堂の中がにわかに活気づく。


 ホワイトさんとターニャがジュノとジョニーの体を氷の棺から取り出し、全員で毛布を持ち寄り体をさすって温めた。


 真っ白だったジュノとジョニーの顔に血の気が帯びてきた。呼吸で胸も上下している。


 そして、ジュノが目覚めた。開口一番、俺の顔を見て言ったのは「ここどこだ?」だった。俺の目に映るジュノの顔が涙で歪んだ。


 今までナティアさんに支えられ虚ろに佇むだけだったエルザが、サラサに導かれジュノの胸に手を触れる。そしてジュノがエルザの名前を優しく呼ぶ。

 するとエルザの表情にみるみる生気が宿った。感情が溢れてとまらない様子のエルザは顔をくしゃくしゃにしてジュノにすがりついて慟哭どうこく

 ジュノの隣のジョニーも目覚め、ジョニー一味の部下4人と感動の再会を果たしていた。


 復活したマペットにアッシュが「まぺっとー」と飛びつきそうになったけど、シルベストに首根っこを咥えられ大人しくなった。


 完全復活したマペットは俺の傍に来ると跪き「主よ、ただいま戻りました」と言った。


 初めて聞くマペットの中性的な声色は、ゴーレムらしからぬ、どこか温もりのあるもののように感じた。

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