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工房から外に出ると、雨上がりの雲間に光が差し込んでいるところだった。陽の光を歓迎する小鳥たちが、美しい旋律を奏でている。
俺は雨に濡れた緑と土の匂いがする空気を思い切り吸い込み、肺を満たした。
「こんな気持ちのいい日には、きっと良いことがある」
教会にやってきた俺、キシュウ先生、ホワイトさんは、氷漬けになったジュノ、ジョニーの遺体とマペットの魔核を礼拝堂にあるグラシエス様の神像の前に置いた。
礼拝堂には、知らせを聞いたサラサやマルゴ、ユリナさん。ナティアさんに付き添われたエルザと娘のリンちゃん。ジュノを慕っていた部下たち。ジョニーの部下たち。他にも本当に沢山の人たちが集まってきている。
さっきから娘のリンちゃんが「ママ、ママ」とエルザを呼んでいるが、エルザは虚ろな目のまま反応がない。正直見てられない。
ジュノを生き返らせなければ。
蘇生術の前、験担ぎにシスターのシャーロットさんに成功祈願のお祈りをしてもらうことになった。
ホワイトさん曰く、教会という神聖な場所にも魂魄を清め健やかな状態に保つ効果があるそうで、聖職者の祈りがテイムモンスターの魂魄に働きかけることで復活の可能性が上がる効果が実証されているそうで、人の魂魄にも高確率で効果が期待できるだろう。
今は神にでも縋りたい気分だった俺は、周りのみんなに合わせて手を組んでお祈りのポーズ。心の中で「蘇生が成功しますように」と祈った。
心なしか、不安な気持ちが薄れた気がする。
さあ、覚悟は決まった。
「それでは始めます」
みんなの前に出た俺は、蘇生術の開始を宣言した。




