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ビードラの籠から広場に降り立った俺は、シルベストさんにビビりまくっていた住民たちに「全然怖くないですよ~」と説明。
言葉に不自由な領主が急に流暢にしゃべりだしたことに疑問符を浮かべる住民たちを尻目に、さっそくお城じゃない方の隠れ家、天岩戸のアトリエに向かった。
アトリエで調合の準備をしていると、広場での騒ぎを聞きつけてキシュウ先生もやってきた。
エルザの様子を聞くと、元気とはいえないけど、お腹の赤ちゃんともども大丈夫とのことだった。キシュウ先生にも「ってか、お前言葉!」と突っ込まれたので、ことの経緯を説明。これ皆んなに説明しないといけなさそうだな……。
それはさておき、今は蘇生役の調合に専念だ。
まってろジュノ。必ず生き返してみせるからな。
素材のイレーヌ薬草とムレーヌ解毒草、イリューネ草の花の蜜が入った瓶を調合台にならべていく。
あとは神獣の毛だけど、これは神獣フェンリルの毛でいけると思う。伝承通りなら、神樹を守っていた獣の毛を使ったに違いないからだ。
アッシュとシルベストさん、どちらの毛を使うかだけど……。
トリミング用のハサミを持った俺が、アッシュとシルベストさんを交互に見て考えこんでいると、トリミング台に乗るとやけに大人しくなるカットとシャンプー大嫌いなアッシュはもちろん「シャンプーやなのー」と抵抗。何かを察したシルベストさんも尻尾を又の間に挟めビクビクのポーズ。「おぬし、それは契約違反であるぞ!?」と抵抗を見せるも、ジュノのことを説明すると渋々納得してくれた。
アッシュは説明してもイヤイヤは変わらなかったので、ここはシルベストさんの毛を使おう。
俺は「毛いただきますね」と言いつつシルベストさんの毛をカット。シルベストさんはハサミを見ないようにぎゅっと目をつぶっていたよ。
カットされないとわかったアッシュの方は、とたんに元気になって俺の足に飛びつきズボンを甘噛みしていたよ。
何はともあれ、これで素材と錬金機材の準備はそろったな。
俺、ホワイトさん、キシュウ先生は改めてシルベストさんから聞いた調合手順を確認。【不死鳥の霊薬】の調合作業に入ることにした。




