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アッシュとシルベストさんがじゃれあっている微笑ましい姿を見ていた俺は、こんなに嬉しそうなアッシュを引き離すなんて、そんな人でなしなことはできない……、絶対悲しくなるやつやん! と一人苦悩していた。
そんな俺の脳裏に、グッドアイデアが閃いた。
それは、ガンド王国地下遺跡とイトシノユリナ書斎をつないでいる、あの瞬間移動装置を、ここともつないでしまおう、というものだった。
デルムンドさんたちが調査を開始してから結構経ってるし、あの遺跡から他にも同じ装置が出てきていてもおかしくない。
今のことが終わったら、遺跡に行ってみないとだ。
アッシュを頭に乗っけてご満悦なシルベストさんに、「アッシュがいつでもここに来れるように、瞬間移動装置をここに置いてもいいですか?」と聞いたら、シルベストさんは「ふんす」と鼻を鳴らして同意してくれたよ。
それからは特にすることもなく暇だったので、適当にテイムホテルから食材や調理道具を出して、久しぶりにウナギの蒲焼(サーペントの蒲焼)を作ることにした。
鉢巻をした俺は、七輪、網、熱々の木炭でウナギ(サーペント)に秘伝のタレを塗って焼いていく。頻繁に団扇で扇いで火加減を調整。
団扇から放たれる人だけでなく全動物をダメにする危険な香りが、狼たちの食欲をつかさどる脳の摂食中枢を直撃したようで。
狼たちがどこにいたのかってくらい、まるでゾンビ映画のように群れとなって集まり、舌と涎を垂らしてお座りして俺たちを取り囲みはじめたのだった。
ウナギ(サーペント)の在庫はたっぷりテイムホテルに格納していたので、全員に大盤振る舞いすることにしたのだった。
もちろん蒲焼の香にビードラが黙っているわけもなく、テイムホテルの中で咆哮していたので、狼さんたちにも紹介することにした。
最初はビビりまくっていた狼さんたちも、最終的には仲良く一緒にウナギの蒲焼をハグハグと食べていたよ。
「なんかこれデジャブだなあ」
いつぞやの冬の河原でのことを思い出す俺であった。
そんな風にウナギパーティを堪能していたら、いつの間にか蒼い満月が出る時間になっていた。
さて、本番はここからだな。




