k-479
木々の合間を抜けた俺たちは、泉のある場所にたどり着いた。
狼たちが水浴びをしたり、果物やウサギのような小動物を食べたりして過ごしていた。
アッシュと同じくらいの子狼も蝶々を追いかけたりしていて実に和む光景だ。うちのアッシュの方が百倍可愛いのは譲れないが。
そのアッシュが飛び跳ねている子狼と遊びたくなったのか俺の腕の中でモジモジしはじめた。俺はアッシュに「めっ」と言って我慢してもらった。
アッシュは不満そうに鼻をフンフン鳴らした。ごめんね、後でいっぱい遊ぼうね。
でも今はしなくちゃいけないことがあるんだ。
泉の奥を見ると、樹皮や枝葉が銀ともエメラルドグリーンともつかない不思議な色に光り輝く巨大な樹木がそびえたっていた。
そして、その樹木を守るように毛並みが銀色に輝く一体の巨大な狼が寝そべっていた。
それは巨大化したアッシュをさらにでかくして威厳をもたせたような、美しい銀狼だった。
その巨大な銀狼の元に俺たちをここまで案内してくれた雌狼がいて、銀狼の毛づくろいをしていた。おそらく雌狼は銀狼の群れの雌なんだろう。
どうやら俺たちは、銀狼の案内でここまでたどり着いたようだな。
もっとも俺は腕に抱いたアッシュと巨大な銀狼を見比べ、内心ほっとしていた。
獣たちに襲われやしないかと冷や冷やしていたからな。
まあ、まだまだ安心するのは早いんだけどさ。
俺はなんと声をかけようか考えつつ、俺たちなど歯牙にもかけない様子の巨大な銀狼に近づくことにしたのだった。




