k-442
ゴリゴリと船底を硬い何かがかすめていく。
船底に張り付いたマペットと自律迎撃を設定した精霊樹のニードルがその黒い影に攻撃を仕掛けているが、硬い鱗か何かに阻まれているようだ。
黒い影も船底からの攻撃もあったことで、まるで子育て中のカラスが人の頭をかすめるように、船底をかすめては一定の距離を保って船についてきている。
俺は近くにいたターニャとアッシュにテームホテルから取り出した防具を着させ、自分もベヒーモス装備で身を固めつつ、スクリューの出力を上げて船のスピードを上げる。
そうこうしているうちに、船内で休んでいたマルゴやジュノ、シエラさんたちが出てきて、海中の警戒を始めた。
船底で警戒を続けるマペットの様子から、まだ黒い影はついてきているようだ。
しばらく睨み合いは続き、先に動いたのは黒い影の方だった。
スピードのある黒い影は船の進行方向に先回りし、細長い巨躯を海面に現したのだった。
そいつはテレビゲームに出てくるリヴァイアサンのような、魚と竜とウナギ足して3で割ったような細長いフォルムをしている。こいつは……。
「はぐれの海竜だ!!!」
そう叫んだのは船長のバーデンさんだった。シーサーペントの得意攻撃と言えば確かアレじゃなかったか。
俺は、王立図書館で読んだモンスター図鑑の記憶を引っ張り出す。
確か水に関係する何かだったはず。
中々思い出せず、敵のステータスを鑑定しようとしたその矢先。
シーサーペントが「クルルルルルルルゥゥ」と甲高い鳴き声を出すと、次の瞬間目の前に超巨大な大津波が出現したのだった。多分高さ50メートルはある。
「あ、そうそう、これこれ」
あまりにも現実離れした光景に、間抜けなことを言う俺だった。




