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「フライング・キラーフィッシュ襲来!!」と、クルルポによる船内放送が流れた。
装備をしたまま生活していた俺は、ベヒーモス素材の盾と兜、絶剣デルムンドを手にとる。ターニャとアッシュにも「行くよ!」と声をかけた。
【絶剣デルムンド:ガンド王国の随一の名工デルムンド氏が手がけた絶剣。超希少金属であるアダマンタイトで製作されており、絶対的な武を約束するという意味で絶剣と名付けられた。剣に魔力をこめると、身の回りに剣のコピーが最高で7本現出。空中を浮遊し所有者の身を守ると伝えられている。攻撃力287】
指向性の遠距離攻撃ができるベヒーモスソードも強力だが、今回敵が大量にいる状況からすると、この片手剣と盾という装備が最適だろう。
側にいたターニャとアッシュにも一応防具は装備させたけど、二人の化け物じみたステータスならバトルオーラに身を包んでおけばおいそれと傷つけられることはないはずだ。
準備を素早く整えた俺は、アッシュとターニャを連れて甲板に上がったのだった。
甲板に上がると、黒い影があたり一面をイナゴの嵐のように舞っていた。
近くの甲板の木材の部分にドスドスと飛来した黒い影が突き刺さった。
それを見ると、ギョロリと大きな目玉が俺の方を向き、鋭い牙をむき出しにしてキシャー! と声を上げた。
それを絶剣デルムンドで真っ二つに叩き切る俺。
あたりを見ると、すでに先に甲板に上がった面々や警備にあたっていた者、ツッチーやマペットが殺人魚と戦っていた。殺人魚の数は数えるだけ無駄だろうというくらい多い。
「ターニャは船首、アッシュは船尾に行ってくれ! 俺は操舵室の援護に行ってくる!」
ターニャとアッシュはそれぞれバトルオーラを発動させ、俺の指差した方向に向かっていった。
俺も操舵室でバトルアックスをもちバイキングのように戦うバーデンさんたちの元に向かったのだった。
(踊れ絶剣!)
バーデンさんたちのいる操舵室へ向かう途中、俺は心の中で厨二病ワードを唱える。
どうやら絶剣デルムンドは、魔力を通すと同時に自分のイメージを剣に伝えることで、まるでファ○ネルのように7本に分裂した剣の分身体が術者を守り敵に切り付ける、という機能を持っている。
問題はそのイメージが、声に出すと伝わりやすいということだった。(自宅裏の誰も来ない場所でこっそり実験済み)
妻帯者の俺が「絶剣!!」みたいな厨二ワードを叫ぶのはちと恥ずかしい。
仮に俺が良かったとしても、それを聞いた人たちがヒソヒソ噂する→それをユリナさんが小耳にはさむ→俺めっちゃ怒られる、というルートだけは回避せねばなるまいて。
俺も学習したもんだとしみじみ。
そんな緊迫感のないことを考えつつイメージを剣に叩き込むと、周りに剣のコピーが7本出現した。
7本の剣はそれぞれがまるで意思を持っているかのように、バーデンさんたちに襲いかかってきた殺人魚に切り掛かっていったのだった。




