k-438
クラーケン(でっかいタコのモンスター)の縄張りを迂回し凪地帯に入った俺たちだが、ここが完全に安全かというと、どうやらそうでもないらしい。
フライング・キラーフィッシュという、20センチ大の羽の生えた殺人魚の大群が飛来してくることがあるそうなのだ。
木の盾くらいだったら軽く貫通して体内にめり込んでくるくらいの威力があるらしく、それが数百という単位で襲いかかってくるというのだ。
まるでB級パニック映画である。
だが、どうやら冗談という感じでもないので、ツッコミを入れたい気持ちをグッと堪える。
その反動なのか、俺の脳裏に体内に殺人魚の卵を植え付けられ、食い破られる映像が浮かぶのだった。
バーデンさんによると、クラーケンの縄張りルートだとほぼ100%船が沈没するが、殺人魚ルートだとフィフティ・フィフティで遭遇しないで通ることができるらしく、「どうだ、安全だろう?」とドヤ顔をされた。
ちなみにクラーケンと同じく迂回は必須とされる海竜も、その縄張りに入れば生還は100%不可能なのだそうで。
いやいや。
……まあ、事前に何が来るかわかっているだけマシだと思うことにするか。
それはさておき、対策を考えなくては。
バーデンさん曰く、まず間違いなく膜でしかないドームは貫通してくるだろうとのこと。
一応ないよりはマシということでドームはそのままにしておくことにした。破られても、もう一度貼り直せば良いだけだしな。
船の自律防御とテイムモンスターの防御網もそのままで。
次に全員、凪地帯の間は防具を身につけた上で、盾を持ち歩くことにした。
盾を持ってない人にはテイムホテルにぶち込んでいた俺のサブ盾を貸してやった。
見張りは3人から5人に増やしてルーティンを組み直した。
あと殺人魚は光や音に反応して寄ってくるらしいため、飯は船内で食うことにして、船上や外部での光は極力使わないことにした。
できることはやった。
あとは遭遇しないよう祈るだけだ。
……
凪地帯に突入してから二日目の早朝のことだった。
寝起きで冴えない頭を目覚めさせようと、水桶で顔を洗っていたその時。
ホワイトさんが構築した警報システム(蜘蛛やハトの視覚、触覚情報を船内の別のハトが音声で伝達するもの)が殺人魚の襲来を伝えたのだった。




