k-435
太陽が沈み全ての作業を終えた俺たちは、ループに分かれて暗闇に紛れ目立たないように5番ドックに集合した。
それぞれ積み込む荷物も一度に運べる最小限に抑えてあり、乗船は迅速に完了した。
バーデンさんは信頼できる船乗り経験のある直弟子二人を連れてきていた。操船は普通複数人で交代でやるものだからだ。
そして彼ら船乗りには、雑用係として連れてきたジョニーたちを「好きに使ってくれ」と言って紹介した。
ジョニーたちは、本物の船乗りに感激したのか目をキラキラ輝かせていたよ。
船大工頭、もとい船長バーデンさんの「ヨーソロー」の合図に従い、俺は船の後尾にあるダブルスクリューをゆっくりと回転させた。
すると船が少しずつ前進。全員が拳を握りしめ声を押し殺して沸いた。ジョニーたちとターニャ、アッシュがはしゃぎたそうにしていたので釘をさすのを忘れない。
そうして静かに船出した精霊樹の船がドックを出ると、俺はバーデンさんの指し示す方向に舵を切った。
舵を切ると言ってもイメージするだけでスクリューの後ろにあるフラップ舵が曲がるので、手動で操舵しているわけじゃないんだけど。
地図上はひたすら北上なんだけど、そうするとクラーケン(巨大なタコのモンスター)の巣に引っかかるらしく、まずは東に船を進めることにした。
沖に出ると大分波が高くなってきたので、ドーム上の薄膜で船を包んだ。
ドームは薄緑色に発光させることができ、夜でも船内を明るく照らしてくれる。光は船外に照射させることもできるので、何かと便利だ。(イカ釣り漁船みたいに海のモンスターが寄ってきそうなので、怖くてやってないけど)
精霊樹は空気を綺麗にしてくれるようで、ドームをした船内は潮の香りから一変、シトラス風の香りが漂い始めた。
船出もひと段落したところで、俺たちはひとまず二人一組で作った船室に荷物を置くことにした。
俺はターニャとアッシュと同じ部屋だ。
操舵は俺しかできないのかと思いきや、操舵機能を手動でできる操舵室を船上に作ることができた。
そこをバーデンさんたち船乗り衆3と下働きのジョニーたち5人、案内役でついてきてくれているシーナさんに任せることにした。
艦内では、ターニャとアッシュが「探検しよー!」と言って大はしゃぎだった。
試しに精霊樹風呂をイメージしたら風呂場ができたし、ちょっとしたクルーズ船みたいになったかも。
精霊樹は海水を濾過して真水にして取り込むことができるようで、風呂から出る水を鑑定したら精霊水という体力や魔力を回復する飲むこともにも使える水に変化していた。
ポーションほどの即効性はないみたいだけど、お風呂を沸かして使ったり、常飲したりすると健康になったりするみたいだ。




