k-423
瞬間移動装置を書斎に設置した俺は、実際に使ってみることにした。
俺の家族以外にもサラサやマルゴ、ジュノ、エルザといったいつものメンツが興味本意に見にきていた。書斎はそこまで大人数用には作っていないのでぎゅうぎゅうだ。
「誰か使ってみたい人?」と聞いても全員が首を振った。主の身を案じて身代わりになろうという人はいないのかね。
と思ったら、世界一可愛いアッシュが俺の足に飛びついてきた。俺の味方はお前だけだよアッシュ。
まあ、世界一可愛いアッシュを実験に使うなんてみんなが許そうとも俺が許さない。
パパ行ってくるね!
近くにいたサラサに預けると、クーン心配そうに鳴くアッシュ。
意を決した俺は、ポータルの上に立って足元にあるペダル式のボタンのようなものを踏んだのだった。
ヴゥン
そんな機械音がしたかと思うと、若干の乗り物酔いの感覚と共に景色が一変。ブルーライトで照らされたバカデカいドーム級の倉庫みたいな景色が広がっていた。
「まじか……」
思わず呟いた俺の声が体育館で話したときみたいな独特の反響をしたのだった。
確かにここは知恵の間だ。
「じゃあ、もう一回」
ふみっとな。
再びペダルを踏むと、ヴゥンという機械音。またあの気持ち悪い感覚。アホ面のマルゴが至近距離に出現。
あ、出現したのは俺の方か。
つまり、元の書斎に戻ることができたということになる。
俺は成功を示すため、親指を立ててサムズアップ。
目の前のマルゴがバンバンと俺の背中を叩き、その場にいた全員から歓声が上がったのだった。
実験成功は喜ばしいことだけど、このことは口止めしないといけないと思う俺であった。
特に誰にでも言いふらしそうなターニャとかな。




