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トラキア商業国家連邦を抜ければ、ランカスタ王国だ。
だがトラキアはメキアやガンドのような抜け道技は使えないので、残念ながら死砂漠は通って帰る必要がある。
「パニックワーム、でなければいいなあ」
何となく日本語で呟いた俺の言葉を小耳に挟んだパニックワームの一番の被害者、戦士のヒジンさんが本気で嫌そうな顔をした。
いくら日本語が通じないとはいえ、【パニックワーム】という単語だけには反応するヒジンさんであった。
そして案の定、サルナンの街を中継してイトシノユリナへ戻ろうとしている俺たちをパニックワーム、ミリタリーデザートアント、デッドリーアイアンスコーピオンたちが襲ってきた。
ウネウネするピンク色の悪魔たちを見て顔が真っ青になるヒジンさん。うん、キモイね。
だが今回は混乱耐性マスク、解毒ポーションと対策はバッチリだ。予想してたからな。
ロシナンテ(馬)とメイクイーン(牝馬)の馬用マスクまで用意するという念の入れよう。
その甲斐あってか、戦闘開始から何度かパニックブレスを食らったけど戦闘不能になる人はいなかった。
モンスターの群れを倒した俺たちは、パニックワームの表皮を特に念入りに回収することにした。
イトシノユリナ、サルナン間の取引がこれから活発化するだろう。(というか既に行われているはずだ)
なら素材はいくらあっても足りることはないだろうからな。
それから数日して到着したサルナンの街では、節約して宿屋に泊まろうとした俺たちだったが、前回泊った豪邸に案内された。
流石にタダでは申し訳ないのでお金を払おうとしたら、貰えないと言われた。今度何かで返さないとだ。
サルナンで一泊した俺たちは、それから再びイトシノユリナへと馬車を走らせたのだった。




