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その知恵の間と呼ばれる空間は、間というにはあまりにも広大だった。
見える範囲だけでも、軽く野球ドームくらいの広さはありそうだ。
それから俺たちは、知恵の間を探索することにした。
部屋をしばらく調べると、ここが古代土鬼人語(バンデッド王たちが使っているドーリア語とはまた違う言語のようだ)で書かれたおびただしい数の石板と魔動具が保管されていることがわかった。
至る所に照明器具の明かりがあり、魔動式のロボットがせわしなく動いており石板や魔動具を管理していた。
知能の間AI曰く、ここにいるのは部屋を管理するロボットだけで、危険なモンスターはいないと言っていた。
まあ一応何があっても良いように警戒だけはしておこう。
知恵の間に保管されている魔動具の収納場所には説明が書かれた石板が設置されていた。
鑑定スキルで解読したところ、半永久魔動機関式エレベータ、魔道式列車、瞬間移動装置を発見した。
パッと見ただけでこれだけのものがある。とんでもないぞこれは。
奥にはさらに別の棚や部屋があるようで、他にも便利な魔動具が眠っていそうだ。
こうなってくると、後々この知恵の間にある発明品絡みの権利関係が問題となりそうだ。
だが幸いここには、この国の国王バンデッド様がおり、交渉ごとには一日の長がある元商社マンでランカスタ王国貴族の俺がいる。交渉のサポート役としてサラサもいる。
「あ、バンデッド様。ちょっとご相談があるのですが」
さて、まずは軽く先制攻撃といくか。俺は笑顔で話しかけた。
あたかも軽いことであるかのような雰囲気を醸し出すことが秘訣である。まあ相手も海千山千だ、油断なんかしてくれやしないとは思うが。
俺は、この国を支配している張本人との交渉を開始したのだった。




