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デルムンド氏は興奮冷めやらぬという表情で、胸から拳大の緑色の宝石を取り出し何かを唱え始めた。
わけがわからず呆然と見守る俺たち。なぜか止めに入るバンデッド王。
すると本棚と一緒に壁が動き、大きな扉が現れたのだった。
「さあ皆の者、行こうじゃないか! ケイゴオクダ、ターニャ、アッシュ、ボクに付いてくるのだ!」
「どうしていつもお前は、王のオレを差し置いて自分勝手に決めてしまうのか……」
何かを諦めたらしいバンデッド王が、盛大にため息をついた。
バンデッド王の背中がリストラされたサラリーマンみたいになっている。
あとアッシュの名前、教えたっけ?
そう思いつつ俺は隠し扉を潜り、大きな箱部屋に入ったのだった。
そして全員がその箱部屋に入ると扉が閉まった。
ヴゥ……ンという駆動音がしたかと思うと、重力が変化したような感覚がした。
というより俺はこの感覚を良く知っている。エレベーターで降りているときの感じだ。
どうやら箱部屋全体が地下に降りているようだ。
…
……
それにしても長い。どれだけ降りるのだろう。
道中の時間でデルムンドが色々説明してくれた。彼女は古代山人と古代鬼人との混血希少種族、土鬼人。
長命で博識。魔力、膂力が高いのが特徴で、ツノの数、髪の色で実力や希少性が変わるそうだ。
バンデットとデルムンドは同じ土鬼人であり、二人はその中でも超レア種。
実年齢は余裕で100歳は超えているとのこと。正確には教えてくれなかったけど。
そして、今どこを目指しているのかというと土鬼窟と呼ばれる土鬼人が先祖代々守っている古代遺跡なのだそう。
古代遺跡は土鬼人の知識や宝が埋まっており、未だ未踏破の領域も多く、今使ったエレベータやトロッコのような乗り物もその宝の一部なのだそうだ。
いきなり地上に出すと大騒ぎになるような代物で再現性もないということで、あのドーリア兵士たちが使っていたロボットのように量産に成功したものだけを地上に出すことにしているそうだ。
つまり今俺たちがいる穴倉は差し詰め王立研究所で、デルムンド氏は考古学者兼研究開発者というところか。
この穴倉の中には王の許可を得た者しか入ることはできず、今は精鋭探査チームが数チーム入っているとのこと。
というのも、地上には現れないような強力なモンスターも生息しているからだそうで。
今俺たちが入れているのは、バンデッド王が同行してくれているからに他ならない。
モンスターが出るとの言葉にギョッとした俺たちだったが、今回通る道はモンスターを排除してある道なので危険はないとのことで安心した。赤子のセトも連れてきているからな。
その後ややしばらくしてからエレベータで降りた後、長いトンネルをトロッコみたいな乗り物で移動すること小一時間、ようやく目的と思われる場所にたどり着いた。
「ここが知恵の門だよ!」
興奮した面持ちのデルムンドが、4メートルを超える巨大な石門の前でそう言ったのだった。




