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俺の手紙の内容を聞いたデルムンド氏。
彼女は作業をしていた腕をピタッと止めた後、頭だけがギーっとこちらを向き、俺の手元にあるグラシエスの牙を凝視した。
そしてもの凄い勢いで俺に飛び掛かかったかと思うと、俺の手元から牙をふんだくったのだった。
「キ、キ……、キター! 長年の土鬼人の夢。神金属キター!!」
的な嬌声をあげグラシエスの牙に頬擦りするデルムンド氏。俺の中でさっきまでのクールなイメージがガラガラと音をたて崩壊していった。
それからデルムンドはターニャ、アッシュ、俺をモノクル越しに見比べ、ハッした表情になる。
「待てよ……、確か土鬼窟の文献があったぞ!?」
デルムンド氏が壁面に手を向けると、一冊の本が浮遊し彼女の手元へと吸い寄せられる。
よくよく見ると、火の粉が本に降りかかっても膜のようなもので弾かれている。おそらく何等かの魔術的な処理がされていると思われる。
そんな風に考えている間もデルムンド氏は、貪るように文献のページをめくっていた。
「イヤッハーー! やはりそうか! 知恵の門、魔王を打倒する者、獣、運命人。鍵がこんなにあっさり見つかるなんて!」
「デルムンド、お前はさっきから何を言っている?」
意味不明な言動を繰り返すデルムンド氏を見るに見かねたバンデット王が、デルムンドに声をかける。
「ゴメンよ、ボク興奮が止まらないんだ。早速で悪いんだけど土鬼窟に行こう。道中で説明するから。それに、キミたちが欲しいものはきっとそこで手に入るはずさ!」
的なことを俺たちに言うデルムンド氏。もちろん興奮した彼女の早口を聞き取れるはずもなく、ハインリッヒに通訳してもらっている。
ハインリッヒは自分がなかなか理解し難いことを通訳しているためなのか、終始困惑顔だったのが俺の目には印象的に映った。




