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俺はビードラの眠る亜空間に収納した古文書を書き写した紙を取り出し、エリューン様に聞いてみることにした。
「魔王を討伐した勇者が神鉄製の武具を装備していたと、とある文献に書いてあったのですがご存じないでしょうか? これがその文献なのですが……」
紙を手渡す俺。
その紙を読んだエリューン様は、
「以前レガリアと名乗る勇者に精霊樹の一部を分け与えたことがあった。我が神から勇者が来たらそうしろと仰せつかっている。そしてそなたに与えた指輪には精霊樹を出し操る力がある。神槌の方は申し訳ないがわからない」
そう言ったのだった。
つまり、過去の勇者一行はこの指輪を手に入れていたということだ。精霊樹も何か勇者絡みで関係のあるアイテムの可能性がある。
そして、
「ここに来た勇者はここから南東にある土の国に向かうと言っていたと記憶している」
とエリューン様は言った。
南東といえば、これから俺たちが向かうガンド王国がある場所だ。
「ありがとうございます」
俺はエリューン様にお礼を言ったのだった。
……
それから俺たちは三日ほど宮殿に滞在し、メキア文化を堪能した。
自然の良さを取り入れた様々な道具やインテリアの数々。幻想的な建築様式にはさぞかしテイラーさんたちが鼻息を荒くすることだろう。
俺は魔道具で建築物や美術品の写真を残し、持ち帰ることにした。もちろん許可をとった上で。
サラサは森人商人との商談で大忙しで、部屋の露天風呂で飲んだくれようとしていたマルゴの首根っこを掴んでこき使っていたよ。
俺たち家族も大いに精霊都市観光を楽しんだ。
国内随一だと紹介された【風精の吐息】という工房を見学したときに精霊樹を加工したスリングショットがあったのでユリナさんに買ってあげた。
訓練場で撃ってみたら、飛距離と弾速が二倍になっていた。なんちゃらっていう魔法がかけてあるらしく、的になっていた熟れたトマトが爆散していたよ。
これはいよいよ夫婦喧嘩の行き着く先は、先ほど爆散していたトマトと同じようになった俺の頭ということになるのではないか?
夫婦関係は今のところ良好だが、何をきっかけに怒りだすかわからないのが女性というものだ。
掃除しないとかね。
これまで以上にイクメンになろうと決意する俺であった。
……
「ではエリューン様、そろそろ行きます。色々ありがとうございました。」
エリューン様に挨拶した俺たちは次の目的地へと出立したのだった。




