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それから俺たちは、一週間くらいかけてトラキア商業国家連邦の首都サルナンを視察した後、次の目的地精霊王国メキアを目指すことにした。
ハインリッヒによれば、精霊王国メキアは地理的にはトラキアから西側の大森林地帯の位置にあるらしい。
そしてそこにたどり着くには、再び砂漠地帯を抜けなければいけない。
トラキアの首都サルナンからメキアには街道と宿場町が点在していた。
とはいえここまで遭遇したパニックワームやらデッドリーアイアンスコーピオンといったモンスターたちが俺たちを襲ってきた。
とにかく砂漠のモンスターは多勢で襲ってくる。
その度に俺たちは隊列を組んで応酬。さっそく作ったパニックワームのマスクが役立ちもした。
下手すると死人が出そうな中、二週間ほど馬車を走らせ何とか国境に辿り着くことができた。
遠くに森が見える。久しぶりの緑に心が躍る。
森の中心部には巨大な木が一本生えているのがこの距離からでもわかる。さらに近づくと国境検問所があった。
国境検問所では木製の弓に木製の軽鎧という装いをした兵士が詰めていた。
木製とはいえ、おそらく普通の木ではない。魔力を感じる。
兵士もモデルのようなスタイルに絹のような白い肌、スナフキンのような飄々とした雰囲気を感じる。
【森人:森の民とも言われる眉目秀麗な精霊王国メキアの大半を占める種族。精霊との混血で生み出された種族とされ樹木精霊の加護を受ける彼らは、長寿で高い魔力を有していることが多い。土、風、樹木系統の魔法、俊敏さを活かした戦法を得意とする】
やはり只者ではなさそうだ。
最初めちゃくちゃ警戒されたけど、おそらく森人兵士の主であるエリューン王からの通行許可証を見せると兵士の態度は一変した。
「ワタシ、メイリーン、デス。ヨロシク」
森人兵士は右手を差し出し、自分の名前はメイリーンだと教えてくれたのだった。
彼女の口にする言葉はランカスタ語でもトラキア語でもない、どこか品のある言葉だと思った。
そしてメイリーンさんは、精霊王の棲家である精霊都市への案内役を買って出てくれたのだった。




