k-389
パニックワームの毒腺から漂う黄色のガスを吸い込んだとたん、目の前にいるユリナさんが10人に分身。フェニッ〇ス幻〇拳レベルの幻覚が俺を襲った。
やったーーー! 美人なユリナさんがいっぱいだあ〜〜!!
しかし幸せを感じたのは束の間、皮を被っていた魔人ヴァーリがユリナさんの皮を一斉に破ったのだった。
ぎいやあああああああああ! いひいいいいいいい〜〜!!!
絶叫して泣き叫ぶ俺。
しばらく「ごめんなさい」と繰り返しながら涙と鼻水を垂れ流していると、不意にヴァーリは消え失せた。
すると今度は暗闇から世界一可愛いアッシュが現れ、俺の前でお座りした。
そしてアッシュもまた10匹に分身したのだった。
わーい、アッシュがいっぱいだあ!
なんという多幸感! 世界一のもふもふが10匹も!!!
最高だーーーー!!!
しかし、その幸せは長くは続かなかった。
デカいゴキブリモンスターがアッシュの皮を食い破り俺の体を弄り始めたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
声もなく絶叫する俺。
俺の目から光が失われていく。
さらに寄せては返す幸福と絶望の波。
その度に俺の心はささくれだつ。
どんどん俺の中からあらゆる感情が失われいく。
自分が誰なのかも、どうしてここにいるのかもわからなくなってきた……。
すると不意に、俺の名前を呼ぶ声がしてきた。この声は……、ユリナさん?
気がつけば、目の前に涙を浮かべたユリナさんがいた。
今も彼女は俺に手を上げながら名前を呼び続けていた。
「痛いよユリナさん……」
俺がそう言うと、彼女はようやく手を止めてくれたのだった。
『個体名:奥田圭吾は錯乱耐性Lv1を取得しました』
と同時に流れる告知音とポップアップするステータスウインドウ。
周りを見ると、心配そうな顔をしているみんながいる。そうか、どうやら俺はフェニッ〇ス幻〇拳レベルの幻覚を見ていたようだ。
ターニャが泣きながら俺の足に抱きついてきた。アッシュも情けない顔で俺を見上げている。二人とも心配かけてごめん。
あとなんかやけにほっぺたがズキズキ痛むのだが……。
俺は自分の姿がわかるようにセットした姿見に映る自分の顔を見てみた。
すると案の定俺の頬は、まるでアンパ◯マンのようにパンパンに膨れ上がっていたのだった。




