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王族の席に呼ばれた俺たちは、すっかり体調が良くなった第三王女のヴィオラちゃんと息子の顔合わせをすることになった。
バブバブキャッキャと楽しそうな息子とヴィオラちゃん。なんか和むね。
同じように目を糸のようにした殿下が、何かを思い出したように執事さんから腕輪を二個受け取ると、二人に手渡した。
どうやら数十文字の文章をやりとりできる魔道具とのこと。防水加工されているらしく、お風呂の中でも大丈夫とのことだった。
まだ小さいセトの腕には大きすぎだったけどな。
うちの息子もいずれはこれで、ヴィオラちゃんと恋文のやりとりでもするようになるのだろうか。
晩餐会を堪能した俺たちは、一晩王宮に泊まり翌日イトシノユリナに戻ることにした。
◆
イトシノユリナに戻った俺は天岩戸の鍛治場にこもっていた。
俺の目の前には一本の牙。
【グラシエスの牙:蒼玉竜グラシエスの牙。神秘の力を宿し、神鉄オリハルコンの素材となる】
があった。
確認しよう敵が何を嫌がるのか。ターニャの存在もそうなのだが、俺の存在もそうなのではないか。
だから俺の領にちょっかいをかけてくるのではないか。
それで経済発展をし兵力を充実させること以外にもあるんじゃないかと思考を進めた。
すると頭に浮かんだのが、古文書に書いてあった神鉄オリハルコンとやらのことが頭に浮かんだ。昔勇者が魔王を倒すのに使われた武器の素材金属。
俺にそれを造られたくないと敵は考えているのではないだろうか。
その仮説の元、俺は神鉄オリハルコンとやらを作ってみようと思った。簡単にできるとは思ってないけどな。
ではおさらいだ。
古文書には「鍛冶を極めた者」「神のカケラ」「神獣の爪」「貴鉄」「神槌」という単語。そして、「神槌」に関しては「精霊樹の船」「復活の炎」のキーワード。
製造方法は、神獣の爪と神のカケラを砕いたものを貴鉄と一緒に炉で熱することで神鉄オリハルコンを得る。
現状これらをヒントに手探りで進めるしかない状況。
まず、「神のカケラ」とはグラシエスの牙のことではないか。「神獣の爪」はアッシュの爪とあたりをつける。
だとすると。俺はグラシエスの牙を手持ちのハンマーで思い切りぶっ叩いてみた。
腕に衝撃が走る。声にならない悲鳴。
牙には傷一つついていなかった。
炉で限界まで熱して叩いても結果は同じ。
そういえば古文書には「鍛冶を極めた者」とある。つまり鍛治レベルを上げろということだろうか。カンスト的な意味で。
その日から俺はマルゴからモンスター素材を流してもらい、武器防具の製造を日課とすることにしたのだった。
◆
それからしばらく装備製作を繰り返してようやく鍛治スキルのレベルが20となったの。
が、どうしても牙を砕くことはできなかった。
残る問題はハンマーの方だろうか。そういえば古文書には「神槌」と書いてあった。
これを手に入れなければならないのだとすると、しばらく鍛治作業でできることはなさそうだ。




