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敵が色々仕掛けてくることにはどんな意図があるのだろう。俺は考えてみることにした。
敵の行動には負の感情を巻き起こらせることで人々が協力しあうのを邪魔しよう、そんなメッセージが込められているように思えてならなかった。
敵の行動原理を知ればその対処法もわかるというもの。
ならば逆に、人と人が協力しあい良い感情の連鎖を起こす。
そして容易には落とせない強固な絆みたいなものを築くことができれば、それは敵が一番嫌がることなんじゃないだろうか。
俺はそんな仮説を立ててみた。
そこで俺は、次の一手として外国との関係を深めることにした。
役立ってくれたのはレスタ貴族のハインリッヒだった。
ハインリッヒはあの後ライラさんと結婚し、新婚旅行も兼ねて国外を渡り歩いていた。
そこで、彼に訪問する国々との橋渡し役をお願いしたのだった。
そして今のところ俺たちは、ヴォルフスザーン領の南に位置する精霊王国メキア、トラキア商業国家連邦、ガンド王国。
精霊王国メキアはここから南西に位置する森深い国で、高度な魔法技術がある国。なんでも精霊の王様がいるとのこと。
トラキア商業国家連邦は、ランカスタ王国の南に位置する砂漠のオアシスに出来た商業国家。ランカスタ、メキア、ガンド他多数の国家とも広く交易している国とのこと。
ガンド王国はトラキアのさらに南に位置する峻厳で広大な鉱山を要する国で、鍛冶技術が発達しているとのことだった。
精霊王国メキア、ガンド王国とはまだ交易できていない。
トラキアの動きは早く既にこちらに大商隊を送ったと先ほどハインリッヒから連絡がきた。ハインリッヒもジルさん以下、部下を使って方々に当たってくれているそうで、動きがいい。
メキア、ガンドには使節団を出して交易品をもたせて感触を探る腹づもりだ。近々俺も出張って挨拶しなければと思っている。
それ以外にも、ハインリッヒから追われていた時にお世話になったホワイヨを擁するキール王国。
キール王国ともホワイヨの特産品を仕入れる関係で付き合いがあったんだけど、一歩進んで外交に力を入れることにした。キールの首都にこちらの外交役の人間を置いて、こまめに連絡を取るようになった。
ハイランデル王国とは現状外交を行うのは難しい状況だ。先日もモンスター闘技場での爆弾テロや色仕掛けをしてきたばかり。
ただ一方的に敵認定して断絶というのはあまりにも稚拙。内々に手紙や間者を入れて糸口を模索している。
俺の本当の目的は交易を通じて経済発展をすることはもちろん、グラシエス教を布教することにあった。
そして今日トラキア商業国家連邦の大商隊とともにハインリッヒとライラさんがイトシノユリナに立ち寄ったのだった。




