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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-369

 モンスター闘技場ができるとなって、冒険者の間ではモンスターテイマー人気に火がついた。



 そもそも専用のブルーウルフを乗りこなす一般兵もモンスターテイマーと言えないこともなく、ブルーウルフを出場させることは一応ルール上可能だ。


 うちの軍は副業OKとしているので、余暇に闘技場で一稼ぎしようという人も多いようだ。


 それでテイムモンスターの実力が伸びるなら、むしろ軍にとってはプラスという考えだ。


 一応軍である以上規律が大事なので訓練中の新兵は副業NGにしてるけど、新兵訓練を終え、兵としての心構えができた者は基本余暇に何しようが口は出さないことにしている。


 もしそこで道を踏み外すようなことがあるようなら、そこは法律ルールで裁かれることになっているので、そうそう悪いことは起こらないと考えている。



 ◆



 モンスター闘技場のオープンを明日に控え、温泉ホテルでのこと。


 俺はモール温泉の露天風呂を堪能した後、和室風に設計した宴会場で浴衣を着込んで和食風に開発したコース料理の最後ラストの試食会をしていた。


 もちろん、サラサやマルゴ、アイリスといった主要メンツ。セトを抱いたユリナ

さんも隣にいる。サラサとエルザも赤ちゃんを抱っこしている。



 和食コース料理は投資している食品会社とボクゼンさんやトクジュウさんを始め料理店のシェフたちが総力を結集して開発した。



 俺は今日この日のために用意した最終兵器アルティメットウエポンを投入する段取りとなっている。反応が楽しみだ……。


 酒造会社では職人たちを集め日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、クラフトビール、シャンパンなど元の世界の美味しいとされる酒の味とその製法をわかる限り伝え開発している。


 その中でも最近完成した自慢の酒。それは純米大吟醸だった。


 素材のコメは和食《《っぽい》》文化が根付く隣国の町ホワイヨから取り寄せ、栽培から製法まで研究に研究を重ねて作った。


 味は芳醇旨口を体現するかのようなお気に入りだった山形の酒に近しい味をイメージ。米の旨みと甘み、エレガントな香り、心地よい余韻を感じる酒に仕上がったと思う。


 味はマジで日本の一流のものと変わらないくらいの出来栄えである。


 今日はその試飲会も兼ねていた。



 料理と一緒に和服を着た給仕たちが日本酒大吟醸ボトルを持って、丁寧にマスに入ったグラスに盛りこぼしにして注いていく。


 素敵な演出にほくほく顔になるみんな。だよな。



 俺がまず飲み方をレクチャー。うん、うまい。


 それから刺身やウニといった日本酒に合いそうな肴の数々を食す。やばいな。



 俺を真似して、みんな思い思いに口をつけると固まった。それから叫びながら号泣を始める面々。素晴らしい反応をありがとう。


 これで、このプロジェクトは大ヒット間違いなしだろう。




 だがこの極上の酒を、このまま温泉ホテルのものだけにしておくはずがない人たちがいる。


 もちろんサラサとアイリスだ。


 アイリスはその場で専売契約書を作成し俺にサインするよう求めてきた。まあ、ちょっとなら売ってもいいかと、適当に契約条件をいじりながらサインしようとする俺。



 とそこへサラサが「ちょーっと待ったあああ!!」と叫びながら、アイリスの後頭部に飛び蹴りして妨害。


 アイリスが「ほげー!」と変な声を出しながら吹っ飛んでいったよ。


 アイリスがそれでも粘り強く「さあケイゴ、さっさとサインするにゃ」的なことを言いサインを促してきた。


 いやなんか物凄くおっかない人が睨んでますが……。


「無視するんじゃないわよ、色ボケ猫! ケイゴ、どういうこと? あんたまさか……浮気!?」みたいなことを言ってきた。


 待て待て。


「こういうのは早いもん勝ちだろ?」的な返しをする俺。


「あんまりだわ! 私というものがありながら!」的なことを言うサラサ。


 冗談だとわかってるけど、色々と問題があるからやめろ。


 まあここは、二人に平等に卸すとしよう。ということで契約書を二種類作成。



 とそこへ、最近完成した温泉に入り浸っているサラサのパパアランさんが乱入。


 俺の日本酒の入ったグラスを奪い取り、ゴクゴクゴクプッハー。


 「おいおい滅茶苦茶うめえじゃねえか! なあこれ俺にも売ってくんない?」的なことを言ってきた。


 何しやがる。



 「いやー、最高牛シャトーブリアンの味が忘れられなくてよお。きちゃったよ」みたいなことを言うアランさん。


 「きちゃった、じゃないでしょ!」と怒るサラサ。


 この父娘おやこ平常運転いつもどおりだ。


 一応俺は、「アランさんが飲む分くらいだったらあげますよ」と言っておいた。



 そこへ、「やはりここにいましたか、さあ帰りますよ」と言って現れたのはアイリスパパのディーンさん。


 アイリスがザックと結婚して以来、何かに取り憑かれたかのようにこうして仕事に打ち込むことで、何とか精神のバランスを保っているようだった。


 ちなみにアイリスは商人としての仕事があるのでイトシノユリナにいるが、旦那のザックにはザックには東の港町サンチェスの開発を任せているのでここにはいない。



 アランさんの首根っこをむんずとつかむディーンさん。意外と力持ち。


 「俺の酒があああ!」と叫ぶアランさんを連行していったのだった。



「お前たちの父ちゃん面白いな」と言う俺。


「「……」」



 サラサとアイリスは妙に冷めた表情で父親を眺めていたのだった。

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