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それからモンスター闘技場の準備は進んだ。
ツッチーの掘削スキルで建設現場で温泉を掘り当てることができた。泉質は植物由来の美肌の湯としても知られるモール温泉だった。
今から露天風呂の完成が待ち遠しい。
闘技場やその周辺施設を運営するには大量のスタッフが必要なので募集をかけた。
だが人口が増えているはずなのに人出は足りておらず、より高い賃金で募集をかけなければ人がこない状況になっていた。
猫の手も借りたい状況に俺が個人的に運営している孤児院 “子狼の里” からも年長組を引っ張って短時間のパートタイムで働いてもらうことにした。
新たな職業創出。物価と賃金が両方上がる、良いインフレ。好景気の循環が始まっていた。
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魔王やらなんやらに狙われているのにこんなことしている場合か? という声が聞こえてきそうだが、舐めてもらっちゃ困る。
魔王だか何か知らんが、ハイランデル王国との戦争を見ても明らかな通り、あくまで戦いは国と国によるものだ。
ターニャ個人の能力はもちろん大切だが、それだけで勝てるほど甘くはない。
とどのつまり、戦争はお金=国力がある方が勝つのが世の常なのだ。
お金があれば兵士を雇うことも武器を買うこともできるし、諜報戦を有利に運ぶこともできる。
なんだったら莫大なお金をかければターニャやアッシュの育成をもっと効率的に行うことだってできてしまう。
つまり思いつきで遊んでいるだけにしか見えないことが、好景気を生み出し、経済発展をもたらすのであれば、これほど敵に対する有効打となることはないのである。
つまり俺は、一見のんべんだらりと人生を謳歌するふりをしながら、虎視眈々と敵に対する痛烈な一手を打っている最中ということになる。




