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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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 結婚式が終わってもその余熱は冷めやらず、街はさらに活気を増していった。



 俺たち主催者側がステージを盛り上げた演目の数々。歌、踊り、マンザイ。


 皆は気づいた。これ、普通に作った劇場そのままにして、劇団みたいな感じでやれば儲かるんじゃね? と。



 結婚式で披露したマンザイの一つは、うちの男どもがパンツ一丁になって右手を振り下ろす動作を繰り返しつつランカスタ語で「ほっといてくれ!」という意味の魂の叫びを連呼するというネタ。


 それなりにウケていた。


 元ネタがあるのはもちろん秘密であるし、さらに言えば元ネタはマンザイというよりはリズムネタに属するものになる。



 他にも部下に仕込んだ演目はたくさんある。



 もう一つは『リュートザムライ』なるリュートを弾きながらひたすら他人をディスり続けるというネタ。


 『リュートザムライ』はディスられた側が必ずキレてリュートザムライと乱闘騒ぎになるという、喧嘩芸的な要素が足されていたので異世界リバイバル版と言えないこともない。


 さらには『ピロシキ』や『ワイルド伝説』という演目も編み出した。


 『ピロシキ』は、ホストのような格好をした哀愁漂わせる暗い顔の男がフラメンコ風の音楽をバックに自虐発言を繰り返し意気消沈した後、焚き火を焚きながらピロシキを焼き、静かに人生観を語り始めるというシュールネタ。


 『ワイルド伝説』は、二人ひと組のコンビが「伝説、伝説」とリズムに合わせて登場し、一人のワイルドな伝説を賞賛し続けるという、こちらもマンザイというよりはリズムネタの部類に属するネタである。



 部下たちはノリノリでネタを演じてくれ、監修役の俺もなんだかんだで楽しかった。



 これらの演目を有志で劇団を結成し、酒場を兼ねた劇場で毎日のようにローテーションを組んで披露することになったのだ。



 また結婚式では部下にネタ披露を強制するばかりだったので、このままでは部下に宴会芸を強要するただのパワハラ上司になってもいかんと、俺も大学の軽音サークルで培ったギターと歌を披露することにした。


 リュートを改良して作った六弦アコギで、ロックスターの弾き語りや、結婚式で定番のゼ◯シーのテーマ曲とかを歌った。


 ゼ◯シーのはサラサとマルゴとの結婚式でも歌ったやつな。


 そしたら、吟遊詩人どもが大挙して押し寄せ、俺に弟子入りしたいと言い出し始めた。


 なので俺は、曲をコピーするならご自由にと言って手書きのタブ譜を渡して基本的な読み方を教えた。


 連中は六弦アコギを同じ工房で手に入れて練習し、劇場や酒場で演奏すると息巻いていた。



 そして俺も、時たま劇場で演目を披露することに。


 それをサラサやマルゴたちが酒を飲みながら観て、拍手喝采をくれたり。


 ユリナさんは結婚式の熱を思い出すのか、頬に手を当ててポッとなっていた。


 ユリナさんの中での俺の評価が上がるのなら、これくらい安いもんだ。



 なので俺は一日のスケジュールの中にアコギの弾き語りの練習を追加した。


 そして夜の飲みも、庭先で釣りをしながら飲むやり方と、酒場を兼ねた劇場で弾き語りを披露しながら飲むと言う楽しみ方を、気分によって使い分けることにした。



 ゼラリオンだの魔王だの色々問題もあるけど、気を張っていてばかりじゃ疲れちゃうからな。


 そいつらのせいでわざわざ自分らしさを捨てることもないだろう。


 だから基本に立ち返り、あくまで俺はマイペースに、のんべんダラりんといかせてもらおう。




 そして、結婚式や愛を語る弾き語りのおかげでとても良いことが起きた。


 若干マンネリ気味だった俺とユリナさんの夫婦関係が、出会った頃のように情熱的な盛り上がりをみせ始めたのだ。

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