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帰りは俺が乗ってきた二頭立ての馬車の荷物を整理して、みんなで酒を飲みつつ駄弁りながら帰ることにした。
酒や肴は王都でたっぷり買い込んであるのでバッチリだ。
行きの戦地に赴く緊迫した空気はどこへやら。完全にお花見気分の俺たちであった。
俺はマルゴやジュノと酒を飲みながら、次はどんな商売をしよう、何を作ろう、どこへ冒険へ行こうか? どんなモンスターをテイミングしたら楽しいだろう、みたいな少年心丸出しの話で盛り上がっていた。
神鉄オリハルコンってのがあって、魔王を倒すのに必要かもしれないと言ったらマルゴの食いつきが半端なくて笑った。
そうしていると、サラサ、エルザ、ユリナさんら何かを話し合っていた女性陣から若干不穏な空気が流れてきた。
「×○◯、▲■×◯、ケッコンシキ、×●? ×▲×◯◯!」
ランカスタ語で何か厳しめに責め立てる口調で言うサラサ。
急に酔いが覚め、背筋を伸ばして正座するマルゴとジュノ。何て言ったのかわからないけど、怒っているっぽい。
と言うか結婚式って言ったか? そういえば、前にそんな話をしていたような。色々あり過ぎて、すっかり忘れていた……。
むくれ顔のユリナさんとエルザ。激おこなサラサの図。
ここで「何て言ったの?」とサラサに聞いたところで火に油でしかない。素直に怒られておくが吉である。
まあサラサが何で怒ってるのかは想像がつく。
きっと、あんたたちはいつまでも子供みたいなことばかり言ってるの。女の子に対して責任を取るつもりはあるのかしら? 的なことを言っているんだろう。
それから俺、マルゴ、ジュノの三人は、女性陣に謝り倒すことにした。
犬も食わない何とやらに呆れたアッシュは、大きな欠伸を一つすると、ターニャが眠る布団の足のところで丸まったのだった。




