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邸宅の方に戻ると。サラサとユリナさんがイエローを基調とした花のようなドレス可愛らしい少女に合わせていた。
傍には少女の母親と思われる貴婦人が上品に微笑みながら、メアリーさんの入れた紅茶と “子狼まえかけ特製クッキー” を楽しんでいるようだった。
貴婦人はアッシュを気に入ったみたいで、クッキーを割って食べさせていた。誰にでも懐くし、もふもふのアッシュは最高だ。
「ユリナさんただいま。お客さん?」
「エエト……」
俺の足元に吹っ飛んできたアッシュをもふもふしつつユリナさんに聞くと、その母娘はランカスタ王国軍参謀長で貴族でもあるシルフィードさんの奥さんと娘さんなのだそうだ。
先日のパーティでユリナさん自らデザインして着こなしていたパーティドレスに一目惚れし、母と娘揃ってユリナさんに発注、サラサが段取りをつけたということらしい。
あの短時間でドレスの営業をして売りつけるなんて、流石はユリナさんだ。
もしかしたら商社勤めをしても結構良い線行くかも。
一流商社には意外と女性の営業さんがいて、対外的にはおっとりとした人当たりの良い女性が多い。当然中身は強かだけどな。
日本においては契約締結の決裁権をもつのはオジサマであることが多く、オジサマをコロっと転がすには意外と美人女性商社マンの方が良かったりするのだ。
ただしオジサマの部下が女性だとそこでブロックを食らうことも多い。
その場合イケメン商社マンが海外で仕入れた化粧品のお土産を女性の部下に渡して、契約締結の稟議を回してもらうみたいなことの方が効果は高かったりするので、一概にどちらが優れているという話ではない。
女性商社マンを使うのは営業戦略上のオプション、一手段といった感じだ。
俺はユリナさんの服飾スキル・営業力の高さを見て、そんなことを思い出していた。
彼女には例のイリューネ草のことを聞きたかったけど、邪魔をしちゃいけないな。
俺は丁度庭で剣を振っているターニャと一緒に剣の鍛錬をすることにしたのだった。




