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ヴィオラちゃんの快気祝いパーティの翌日。
本の虫になることがわかっていた俺は、連れに迷惑をかけないため一人で王立図書館に来ていた。
「今日は一日中本が読めるぞー!」
俺は久々に心が躍っていた。俺はこの国の長い歴史を感じさせてくれる巨大建築物を見上げそう叫んだのだった。
図書館に入ると中は古い紙の匂いが鼻腔をくすぐった。
俺はなんとなく、学生時代通っていた大学図書館を思い出していた。
道産子の俺が本州の夏をクーラーなしで過ごさなければならないハメに陥った学生時代、緊急避難先に選んだのが大学図書館だった。
朝の閑散とした王立図書館は、よく俺が茶色い看板の有名ハンバーガー店で買ったモーニングセットを持ち込んで涼んでいた大学図書館によく似ていた。
そんなことを思い出しつつ地下階段を下りていくと、明らかにドアの作りや雰囲気の違う部屋にたどり着いたのだった。
大きな両開きのドアには王族書庫と書かれた黄金色に輝くプレートがかけてあり、ドアの前では兵士が学生や研究者らしき人物の入室チェックしていた。
王様がくれた王室紋を兵士に見せ中に入ると、大きな球体の形をした可動式オブジェを中心に半球体の空間が広がっていたのだった。
空間の形がわかったのは、何故か外壁が全面ガラス張りの半球体となっていたからだ。
ここは地下なので青空が見えるように何かの仕掛けがしてあるに違いなかった。
そして自然光が降り注ぐ書庫にはオシャレなソファーとデスクが並べられ、飲み物を飲みながら読書をすることができるようになっている。
なんと言う贅沢な空間なんだろうかと、読書好きの俺は幸福を噛み締めざるを得なかった。




