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流石に病気が治ったとはいえ、ヴィオラちゃんはパーティには出ないようだった。
主役がいない代わりなのか、陛下はヴィオラちゃんを治療した俺に褒美を渡すことで会場を盛り上げることにしたようだ。
前回バイエルン様の屋敷でも経験した、叙爵式が執り行われることになった。
つまり勇者を育てた功績で準子爵になって、さらに難病の第三王女を治療した功績でその上の「子爵」に取り立てるとのことだった。
ハハー、と恭しく陛下が差し出した剣を受け取る俺。こっそり鑑定してみると、
【絶剣デルムンド:ガンド王国の随一の名工デルムンド氏が手がけた絶剣。超希少金属であるアダマンタイトで製作されており、絶対的な武を約束するという意味で絶剣と名付けられた。剣に魔力をこめると、身の回りに剣のコピーが最高で7本現出。空中を浮遊し所有者の身を守ると伝えられている。攻撃力287】
と出た。ベヒーモスソードが攻撃力241だから、そこだけの比較なら絶剣デルムンドの方が強いことになる。
ベヒーモスソードにもオンリーワンの固有能力があるので、盾を後ろに背負えるような形に鎧を改造し二刀流なんてのも悪くないかも、などと妄想に耽る鍛治マニアな俺であった。
鍛治マニアの俺としては、絶剣をいただけたのは嬉しいサプライズだった。むしろデルムンドという鍛治師について興味が沸いたので、後で図書館で調べてみよう。
さらには褒美として、法衣貴族の任命権が準子爵の時は部下2名だったのが子爵になったことで4名に増やすとのことだった。
国から領地が与えられず金だけが出る貴族、それが法衣貴族なのだが、部下に名誉という名の褒美を与える権利自体が褒美である、という考えがどうやらあるらしい。
法衣貴族2名は妥当なところでマルゴとジュノを任命しようと思っていたんだけど、さらに二人となると悩むなあ。
財務や商業で領に貢献してくれているサラサやアイリス。冒険者ギルドマスターとして、冒険者をまとめてくれているザック。料理で文化貢献をしてくれている者。医術で人々の尊敬を集めるキシュウ先生。街の建築に貢献してくれているブラードさん。
我がヴォルフスザーン領は優良な人材で溢れている。
贅沢な悩みだな。
それから俺はパーティの最中、顔の知らないおっさん貴族連中に話しかけられることになった。俺はなんとか無難にやり過ごせたと思う。
ユリナさんも俺の妻ということで、貴族たちから丁寧な挨拶を受けていた。さっき部屋で「私も慣れなきゃ」みたいなことを言っていたユリナさんは、お店で培った度胸と営業スマイルを発揮して対応していたよ。
パーティの最中ゲルニカ陛下に呼ばれた俺は、さらにサプライズプレゼントを2ついただくことになったのだった。




